オーガニック野菜が農業と人をつなぐ。〈八百屋No.5(ナンバーファイブ)〉が“かっこいい”理由を語りたい。【根城】

みなさんはオーガニック野菜を知っていますか? 聞いたことはあるけれど、うまく説明はできない、という人も多いかもしれません。“オーガニック”は奥が深くてなかなか簡単に説明できるワードではないけれど、ここでは「農薬・化学肥料に頼らず、自然の力にゆだねて育てられた野菜」と記しておこうと思います。〈八百屋No.5(ナンバーファイブ)〉は、そんなオーガニック野菜やナチュラルな調味料、エシカルな雑貨などを取り扱う、根城にある八百屋さんです。今回はオーナーである田中洋充さんと店長の永井由季子さんにインタビュー。お店の背景を知れば知るほど、おふたりの社会課題へ向き合うひたむきさを知ることができました。

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yui-o

青森県八戸市在住。2024年1月より他県から移住し、すでに八戸の魅力の虜に。
ナチュラルな食、そしてスポーツ観戦への関心が高く、八戸の食やスポーツと出合う場に積極的に赴く日々。

八戸市根城6丁目に、2025年の2月で1周年を迎えた〈八百屋No.5(ナンバーファイブ)〉があります。

木の扉と暖簾が温かい印象を与える店構え。

扉を開けると、旬のお野菜はもちろん、店長自らがセレクトしているナチュラル素材の調味料やお菓子など、こだわりの商品が多数並んでいます。

正面には旬の野菜。

冷蔵庫には自社で育てた野菜や、地域の農家さんから届いた色とりどりの野菜も並ぶ。

お店の奥に目を向けると、店長選りすぐりの調味料がたくさん。

「私たちは八百屋を始める前に、まず農業から学びました。〈八百屋No.5〉は〈株式会社Go On FARM〉という会社が運営しています。企業名の『Go On』の意味は『続ける』。持続可能な農業で、日本の農業と食を支え続ける存在でありたいという想いのもと、農家とお客さまをつなげる拠点としてここ根城に八百屋をオープンしました」

そう話すのは、優しい語り口が印象的な店長の永井さん。

「“五方良し”。これがお店の理念です。もともと売り手・買い手・社会をつなぐ表現として“三方良し”がありますが、それに作り手と未来を足した“五方良し”という考え方を会社に提案しました。さらに“五穀豊穣”を願う気持ち、野菜の“五大栄養素”の重要性の理解、食を“五感”で楽しんでほしいという願いなど、私たちが大切にしている想いを並べたときに“五”の存在感の大きさに気付いたんです。それをきっかけに〈八百屋NO.5(ナンバーファイブ)〉と名付けました」

暖簾にプリントされたお店のロゴがかわいい。

 

農業を始めた理由。

なぜ、農業を始められたのでしょうか。オーナーの田中さんに伺いました。

「私たちは農業を始める以前から、ソーシャルビジネスにこだわっています。最初に創業したのは福祉事業で、障害のある方の就労支援事業に取り組んできました。そのなかで、何か自社でも生産物を作ることができないかと考え、“農業”に注目したことをきっかけに、Go On FARMは誕生しました」

障害福祉と農業はどちらも社会課題の一つ。農業は八戸市内に限らず、全国的に耕作放棄地の増加や担い手不足など、さまざまな課題が山積している業界です。

「“福祉”と“農業”、二つの課題を解決に導く『農福連携』に目を向けたことをきっかけに、農業に取り組む方向に舵を切ることにしました。現在、市内の農家さんから畑をお借りして、障害のある方々にもサポートいただきながら農薬・化学肥料不使用の野菜を育てています」

野菜作りの様子。

畑の売りであるミニトマト。彩豊かで華やかです(夏限定の野菜です)。

「特に紹介したいのは、八戸の伝統野菜の食用菊。黄色と紫の食用菊を酢漬けにしたピクルスを作り、商品化しました。今シーズンに獲れる分がまもなく完成予定で、2月から〈八百屋No.5〉にも並ぶ予定です。この菊を摘む作業も福祉事業と連携しながら行っているんですよ」

色鮮やかな食用菊。自分用はもちろん、ギフトにもおすすめ。

 

オーガニック野菜を育てるこだわり。

なぜ、農薬や化学肥料を使わない育て方にこだわりを持ったのでしょうか。

「理由はいろいろありますが、やはり会社として『社会課題に取り組みたい』という想いがベースにありました」

そう語る店長の永井さんも、入社前から環境問題への意識が高かったといいます。

「従来の慣行栽培を否定するつもりは全くありません。私たちは、農林水産省でも『みどりの食料システム』という政策をあげているように、未来の食生活を見据え、現在の環境問題やフードロス問題などの課題と向き合うことが大切だと考えています。

まず、私たちにできることは何かと考えたとき、環境問題との向き合い方として農薬・化学肥料不使用の野菜作りに辿り着きました」

八戸市でも農薬・化学肥料不使用で栽培をしている農家さんも見受けられますが、まだまだマイノリティの分野。そこに目を向け、オーナーとスタッフが並走しながらソーシャルビジネスに取り組む姿勢にとても感銘を受けます。

さらに、就業してくれている障害のある方や、生活に困窮している方に向けて、傷む前の在庫を使った野菜で作るサラダを毎日届ける活動も。それによって、利用者の食生活が少しでも改善することを目指しながら、フードロスの問題にも向き合っています。

店長の永井さんが作る毎日の無農薬野菜のサラダ。

「社会課題の解決に向き合いながら、経営も成り立たせることが使命だと思っています。もちろん、課題は実際に解決しなければならないという思いで取り組んでいますが、まずはアクションを起こすこと自体に価値があると思っていて。それがオーナーである僕の原動力です」

 

“きっかけを生む八百屋”を目指して。

ここに来店するお客さんはどういう方が多いのでしょうか。

「話をしていると、ご自身が体調を崩されて病気になった方、妊娠・出産を経て食生活をガラッと切り替えた方など、“からだの健康”を意識したお客さまが多い印象ですね」

ここに来店する魅力の一つは、店長の永井さんと直接会話できること。

「お客さまとお店の人が対話できる空間は八百屋ならではのカタチだと思います。当店では、私たちが作っている野菜だけではなく、同じような想いで頑張っている地域の農家さんや生産者さんの商品も多く取り揃えているので、ここを拠点に作り手とお客さまをつなぐ役割を担えたらと思っています」

こだわりの醤油と卵。他にもストーリーのある商品が多数。気になる商品についてぜひお店で質問してみて。

「素敵な商品をたくさん取り揃えていますので、これらをまず『知ってもらいたい』という想いが強いです。常連のお客さまに喜んでいただけるお店作りはもちろんですが、多くの市民のみなさんに向けてもオーガニック野菜を通じて、食の理解や、環境問題・フードロス問題、農福連携など、まずは知るきっかけを生む八百屋でありたいと思っています」

 

最後に。

事業運営やお店作りへの想いがひとつひとつ丁寧で、芯のある独自のスタイルがとてもかっこいい八百屋さんでした。最近では、新たな客層との出会いのきっかけ作りとして、有名ロックバンドのマキシマム ザ ホルモンが企画する“腹ペコえこひいき”にも加盟店として参加中! 今後も柔軟に、そして積極的に活動していきたいとお話されていました。

インタビュー後、筆者も無農薬のレモンとにんじんを購入。帰る際には障害のある方が作られた新聞紙のエコバックをいただいて持ち帰りました。

障害者就労支援事業の一環で作られた、新聞紙を使ったエコバック。

レモンはホットレモネードに、にんじんは人参スープに......。無農薬野菜を使ったお料理は味も心もほっこりします。ぜひみなさんも、〈八百屋No.5(ナンバーファイブ)〉でおいしい野菜と新しい気付きを求めに足を運んでみて。

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