
書店×カフェの先駆け? 創業45年の隠れた名店〈カネイリ喫茶〉でモーニング【番町】
〈カネイリ番町店〉の2階書店コーナーに併設する〈カネイリ喫茶〉は、今年で創業45年。今でこそ「書店×カフェ」の空間が流行していますが、昭和の頃から本屋さんの中に喫茶店があったなんて、先進的ですよね。 そんな〈カネイリ喫茶〉で、長年愛され続けるこだわりメニューをご紹介していきます。
〈カネイリ番町店〉の2階書店コーナーに併設する〈カネイリ喫茶〉は、今年で創業45年。今でこそ「書店×カフェ」の空間が流行していますが、昭和の頃から本屋さんの中に喫茶店があったなんて、先進的ですよね。 そんな〈カネイリ喫茶〉で、長年愛され続けるこだわりメニューをご紹介していきます。
盛岡市在住。八戸市の浜育ち。広告代理店の営業経験を経て、2024年春からフリーのライター兼フォトグラファーに転身。
家族が実家を引き払い岩手へ移住したことで、生まれ故郷に帰る場所がなくなった2022年。旅をするような感覚で、はちまち取材を通じて八戸のことを再度勉強中。好きなものはレトロなものとフィルムカメラと、イカドンと八戸の空気。
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カネイリ番町店の2階書店コーナーに併設する〈カネイリ喫茶〉。 昔、学生時代の友人がここでアルバイトをしていて「いつか来てみて! 」と言われていたのですが、行けないまま気がつけば5年……。喫茶店マニア、遅ればせながら友人がオススメしてくれた場所に行ってみることにしました。
くねっとした大きな窓から見えるのは……
樹齢80歳を迎える「ハナミズキ」。春になると窓際は満席になるとのこと。ハナミズキは桜のように見頃が限定的なんだそう。いと儚し。
今年で45年目に突入する〈カネイリ喫茶〉。満席のときには、待ち時間に本を探しにフロアに出る方々も。〈カネイリ〉で購入した本を持ち込んでゆったりと過ごす方もいて、待ち時間がスマホでつぶれることがないそのアナログさにときめき……。自分がデジタル生活に慣れてしまっていることに気づく時間でもありました。本を片手にのんびりできる空間は、チェーン店では味わえない空間なのかもしれません。
書店にカフェが併設されている光景は今や珍しくありませんが、約45年前からそんなカルチャーがあったなんて。 八戸が本のまちと言われているのにもなんだか納得です。
実家がない私にとって、帰省したときの朝ごはんは毎回考えもの。八戸って、なかなかモーニングができる場所が少なくて悩んでいたので、〈カネイリ喫茶〉にモーニングがあるのが嬉しすぎて、張り切って注文(目ヂカラ)。
窓際の席で中心街を行き交う人を眺めてのんびりとできるのは、特別なひとときなのかもしれない。
たまごサンド(コーヒーか紅茶つき)900円。
たまごサンドといえば、スクランブルエッグやゆでたまごを潰したものがありますが、〈カネイリ喫茶〉で挟まれているのは、たまご焼き。創業当初から変わらぬ味を提供し、このレトロなお皿も当時のままなんだそう。割れてしまったものもあり、残っているのが数皿なのだとスタッフさんが寂しそうに話します。きめ細やかなふわふわパンは、鍛冶町にある和菓子店〈金田菓子店〉が製造。たまごはコショウだけで味付けされているというから驚き。マヨネーズときゅうりが挟まれた極めてシンプルなたまごサンドは、〈カネイリ喫茶〉の大人気看板メニュー。
ナポリタン(スープつき)880円。
〈カネイリ喫茶〉のナポリタンの具材はシーフード。こちらもケチャップ、塩、塩コショウだけというシンプルな味つけですが、魚介の旨みも加わり、味わい深い一品。ほんのり甘みも感じ、個人的に喫茶店のナポリタンランキング1位。
クリームソーダ600円。
一般的なクリームソーダよりも濃い目の味わい。ガラスのコースターもレトロさを際立てていてかわいい。
〈カネイリ喫茶〉では日替わりのランチも提供。ほかにもトーストやパスタ、ドリンクメニューにデザートも充実していて、また訪れたくなるラインナップでした。
今回の取材を通して感じたのは「懐かしさ」でした。八戸に住んでいた頃、中心街へ出かけることを「まちに行ってくる!」といって、市営バスや八戸線に乗ってよく中心街に遊びにきていました。私の祖母はそれを「八戸に行く」と表現していて、「なんで八戸に住んでいるのに『八戸』っていうんだろう」と不思議に思っていた気持ちもよみがえりました。
幼少時代にはメモ帳やシールを集めるのがとても流行っていて、よく〈カネイリ〉に行っていました。服を買うならレック、チーノ、ヴィアノヴァ。お盆やお正月のご馳走を買いに行くならさくら野や三春屋と、中心街によく通ったものでした。
八戸を離れて10年が経ち、そこで強く実感するのは「心象風景の変化」です。時代の変化にともない、歴史あるものが移りゆくことも、次世代へバトンを繋いでいくことも必然だと思う一方で、その変化に寂しさを感じることも少なくありませんでした。そんななか、45年間も変わらぬ姿と変わらぬ味を守り続けている〈カネイリ喫茶〉。2階の窓際の席でアップデートされていく八戸の姿を眺めながら、変わりゆくなかに変わらない空間があることの凄さをひしひしと感じました。この空間に救われているのは、きっと私だけではないはずです。