〈魚櫓魚櫓〉でやさしく上品なラーメンを堪能。夜の店で出た魚のあらを昼の店で活用する “二毛作”経営。【六日町】
いまやラーメン激戦区といっても過言ではない八戸市にて、昼はラーメン屋、夜は和食料理店の二つの顔を持つ店があります。昼の店名は〈あら炊き中華そば 魚櫓魚櫓〉。この世界に不要なものなどひとつもない。そんなことを感じさせてくれる、やさしく上品な味わいのラーメンです。
いまやラーメン激戦区といっても過言ではない八戸市にて、昼はラーメン屋、夜は和食料理店の二つの顔を持つ店があります。昼の店名は〈あら炊き中華そば 魚櫓魚櫓〉。この世界に不要なものなどひとつもない。そんなことを感じさせてくれる、やさしく上品な味わいのラーメンです。
ラーメン屋が数多く立ち並ぶ中心街に、SNSを中心に注目を集めているラーメン屋さんがあります。それは〈あら炊き中華そば 魚櫓魚櫓〉。
八戸中心街ターミナル5番のりば(六日町)のバス停近くの〈コンサートホール〉隣。中華そばののぼりと、オレンジ色の暖簾が目印です。
中に入ると、〈裏町しはん〉の看板が……⁈ ま、間違えちゃった⁉️ いえ、間違ってはいません。
実は、〈あら炊き中華そば 魚櫓魚櫓〉とは昼の姿。夜は和食・懐石料理店〈裏町しはん〉として、明かりを灯している、いわゆる“二毛作”経営店です。
始めたきっかけは、新型コロナウイルスの流行。コロナ禍により〈裏町しはん〉の客足が遠のいていき、今後の経営について考えていたのだそう。そこで、まかないなどでラーメンを出していたこともあり、ランチでのラーメン屋営業へ挑戦することに。
〈裏町しはん〉で提供している和食料理では、魚を多く取り扱うため、魚のあらがよく出ます。魚のあらとは、魚の身を切り出したあとに残る部分のこと。たいていの場合、捨ててしまうことがほとんどですが、実は、骨がついているため旨みがでやすく、煮物や汁物にうってつけなのです。
そして生まれたラーメンが、“あら炊き中華そば”! 平目や真鯛など、八戸ならではの魚を使用した澄んだスープが特徴となっています。
さっそく店内に入ろうとすると、こんな張り紙が。
「店内にメニューブックはありません」⁉️
実は〈魚櫓魚櫓〉では、店内にメニューブックを置いておらず、公式インスタグラムのストーリーズと、店頭においてあるメニューボードで当日のメニューを公開しています。
公式インスタグラムのストーリーズ。
店頭のメニュー板。いい味出てます。
メニューは日替わりですので、よくストーリーズをチェックしてから挑みましょう。〈魚櫓魚櫓〉のメニューチェックが日課になりだしたら、あなたも立派な魚櫓ラーです。
メニューを確認し、いざ店内へ!
やはりラーメン屋の風格とは異なる入り口。
今回は、「淡麗あら炊き塩ラーメン」(並700円、大850円)、「平目丼」(300円)、「アバンタージュ恩恵〜山・海・畑の塩〜」(800円)を紹介していきます。なお、料金は先払い制となっています。
まずは「淡麗あら炊き塩ラーメン」。
麺は細麺ストレート。ちゅるちゅるのつるつるで食べやすく、箸がどんどん進んでいきます。
チャーシューは、鶏胸肉と豚肩ロースの2種類。鶏胸肉は食べ応えばっちりで、豚肩ロースの柔らかさはとろけるよう……。
特に印象的だったのはネギ。予想外に甘く、ラーメン全体の上品なテイストを引き立てているようでした。
麺や具も非常に魅力的な一杯なのですが、やはり〈魚櫓魚櫓〉のラーメンといえば、なんといってもスープでしょう!
見てくれ! この美しいスープを‼️
光にあたって、宝石のごとくキラキラと輝いています。まるで太陽の光が反射して輝く海のよう、これぞ八戸の夜明け……!
一口飲むと、ほっと一息つけるようなやさしい味わい。
魚介を感じながらも、きざみ柚子の隠し味がさわやかで、これは本当にラーメンなのか⁈ と疑うほどの上品さを感じます。一生飲み続けたい、このスープ。
完食ならぬ“完汁”余裕です。
次は「アバンタージュ恩恵〜山・海・畑の塩〜」。あさりと野菜を煮込んだスープに豚骨を加えています。
テーブルにどんぶりが置かれると、ラーメンから野菜の香りがふんわりと漂ってきました。
こちらのスープも澄んでいて美しい……。
ひとくち飲むと、野菜の甘さが滲み出ており、野菜スープのようなやさしさを感じました。食べ進めていくとあさりの旨みがぐっと出てきて、散りばめられているいりごまの香ばしさが加わり、「淡麗あら炊き塩ラーメン」とはまったく異なるやさしさを感じることができました。
ちなみに、アバンタージュとは、フランス語で「優位、長所、優れた点」という意味があるのだそう。まさに、肉・魚・野菜の「アバンタージュ」が、ぎゅっと詰まっている一杯です。
ああ、我々は自然の恩恵を受けて、生きている……。おのずと胸の前で合掌し、心からの「ごちそうさまでした」!
最後に紹介するのは「平目丼」(300円)。
ラーメンに平目、なんてぜいたくな組み合わせを選んだやつはどこのどいつだぁい……? 私だよッ! 控えめに言って最高ッッ‼️
つやつやのお米の上に、海苔と、ぷりぷりの刺身がのっています。醤油をかけて食べ進めると、あっという間になくなってしまうほどのおいしさ。
大きさも小丼なので、ラーメンとセットで楽しめます。ちなみに、丼ものも日替わりなので、いろんな組み合わせでランチタイムを充実させることができそうです。
食器は自分で片付けよう!
〈魚櫓魚櫓〉の公式インスタグラムの投稿を見ると、おいしそうなラーメンの写真がずらり!
〈魚櫓魚櫓〉のラーメン紹介かと思いきや、なんとほとんどが他店のラーメン紹介の投稿なのです! こちらは、オーナーである堀江維寛(ほりえ すみひろ)さんが実際に食べたラーメンを掲載しています。
ラーメン作りについて、誰かに教わったことはないという堀江さん。独学で、現在提供しているラーメンをつくりあげたのだそう。そのため、さまざまなお店に足を運び、実食しながらもっとおいしいラーメンをつくるためのヒントを探しているのです。
「今まではお腹を満たすためだけに食べてたけど、今は勉強のために食べています。その記録ですかね」と語る堀江さん。
堀江さんにとっては、ただの勉強記録かもしれません。しかし、こんなにも、ラーメンを愛するすべての八戸市民に見ていただきたいアカウントはありません。ぜひフォローして、地域のラーメンを勉強しながら、ストーリーズを確認し、〈魚櫓魚櫓〉へ行きましょう!
平目を切ってくれるオーナーの堀江さん。カウンター席に座ると目の前で見られます。
たいていの場合、捨てられてしまうことが多い魚のあら。そんな魚のあらを使用した〈魚櫓魚櫓〉のラーメンは、「この世界に不要なものなどひとつもない」と私たちに教えてくれているかのようです。
昨今、エコ活動やSDGsのニュースがよく話題にあがります。資源として再利用できるものを活用していくことで、ごみの量を減らし、持続可能な社会へと向かう機運が、世界的に高まっているのです。八戸も例外ではありません。
ただおいしくラーメンをいただくだけではなく、私たちの生活におけるエコについて、あらためて見つめ直すのもいいかもしれませんね。