陸奥湊エリア出身ライターが選ぶ〈がんこおやじ〉で食べてほしいメニュー3選!【陸奥湊】

陸奥湊エリアで夜を楽しむなら絶対に欠かせない居酒屋〈がんこおやじ〉。JR陸奥湊駅から徒歩3分の立地にあります。本記事では同店のおすすめメニュー3選と、まったく“がんこ”じゃない店主、岡沼宏和さんから、陸奥湊エリアで飲食店を営むことについての思いを伺ってきました。

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小田桐咲-amy-odagiri

1996年生まれ。直感と勢いで生きる牡羊座。青森県八戸市出身。5歳から武術太極拳(カンフー)を嗜んでおり、2019年の全日本チャンピオン。2026年のあおもり国スポでの優勝を目指し、20208月にUターン。『海猫ふれんず』として地元の情報も発信中。育ててくれた街や人に感謝して、その恩を返していけるように活動していきたいです。
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〈JR陸奥湊駅〉を出て左手に徒歩3分。道路のつきあたりで煌々と光り輝くのは、陸奥湊エリアの名店〈がんこおやじ〉です。

湊生まれ湊育ちの筆者にとって、〈がんこおやじ〉はいつも大変お世話になっているお店のひとつ。営業時間が17時から25時と長く、一次会でのんびり過ごせるだけでなく、中心街や小中野で飲んだ二次会でも足を運びやすいのが非常にありがたいと感じています。

また、地元出身者のひいき目抜きにしても、〈がんこおやじ〉のメニューはどれを食べても間違いがないと感じています! 本記事では初めて行く人のために、必ず食べてほしいメニューを3つ紹介していきます!

〈がんこおやじ〉に来たらこれを食べよう! おすすめメニュー3選。

まず紹介するのは「おまかせ刺し盛り」(1,000円)。

〈がんこおやじ〉のお刺身は、季節によって提供されるものが異なりますが、どの時期に行っても、脂がのっていたり、身が締まっていたりと、活きのいい食べ応えのある刺身が楽しめます。

陸奥湊エリアといえば鮮魚。JR陸奥湊駅前は、〈八戸市魚菜市場〉をはじめ鮮魚を扱う卸売業者の店が多く立ち並び、古くから“八戸市民の台所”として親しまれてきました。〈がんこおやじ〉で扱う魚も、陸奥湊駅前の店で仕入れています。現在は八戸で獲れた魚だけでなく、全国各地で獲れた魚も集まっているそうで、その日良いと思ったものを仕入れてくるのだとか。だからいつ食べてもおいしいのかぁ。

同行したカメラマンのなつめは「たまに『シケで(鮮魚が)ありません』という案内があったりして、それがなんか嬉しいんだよね」といいます。確かに、食べられないのは悲しいものの、本当に新鮮な魚を選んで提供してくれていることがわかり、なんだか嬉しいですね。

「陸奥湊で魚を出す店ということもあり、お客さんたちが商品に求めている基準は高いと思っています。春夏秋冬、季節に合わせた旬の魚を味わってもらうために、鮮度や味だけでなく、見た目にもこだわって提供していますよ!」と店主の岡沼 宏和(ひろかず)さん。八戸に来たならば、ぜひ宏和さんこだわりの新鮮な魚を食べてくれ!

続いて紹介するのは「がんこセット(おまかせ串盛り8本盛り)」(1,200円)。

左から塩味の「ささみ(梅しそ)」「八戸美保野ポークバラ」「チーズベーコン」「ぼんじり」。

8本のうち4本は塩味、ほか4本はタレ味となっています。〈がんこおやじ〉の串焼きは、店内で串打ちをしているため、見た目が美しく、焼き加減が均一でふっくらと焼き上がっている印象を受けます。塩っけも絶妙で酒が進みます。

左からタレ味の「ネギま」「つくね」「皮」「レバー」。

串焼きで使用しているタレは、先代から受け継いだ秘伝の味。ザラメ糖や水飴、醤油、みりんなどを何時間も煮込んだタレは甘めで、網で焼かれた上品な肉の脂と合わさって、また酒が進みます。

え、なんですって? うまい魚とうまい串に絆されて、酒が進みすぎてしまった?
そんな飲兵衛たちに、私が強烈におすすめする〆の一品。それは「磯おじや」(1,000円)!!

鍋の蓋を開けると、閉じ込められた湯気とともに、磯と大葉の爽やかな香りが優しく漂ってきました。「匂いだけで〆ることも可能」と言っても過言ではありません。

具材はホタテ、ウニ、エビ、わかめ、大葉。鍋の中の大きな具材や、ふわふわに煮込まれた黄金の卵を見ていると、なんだか贅沢な気分になってきます。凝った味付けはほとんどなく、ホタテとウニから出る出汁をメインに、塩を加えてあっさりと仕上げています。

ちなみに筆者はこちらの「磯おじや」目当てで〈がんこおやじ〉へ足を運ぶこともしばしば。一度食べたら忘れられない、体によく染み渡る味わいです。

大変ノリが良い店主の岡沼 宏和さん(左)と筆者(右)。

取り扱っているお酒はビールやハイボール、サワーといった一般的なお酒のほか、陸奥湊の酒蔵である〈八戸酒造〉の日本酒「八仙」をメインに、県内のお酒を取り揃えています。日本酒は季節限定品の取り扱いもありますが、お客さんのニーズや同店で出している料理との合わせやすさなどを考えて仕入れをしているそうです。

「がんこらしく、おやじらしく、湊らしく」

約60年もの歴史がある〈がんこおやじ〉ですが、2代目店主の宏和さんが同店を受け継いだのはなんと21歳のころ! 宏和さんは高校卒業後、東京の料理店で修行していたのですが、初代店主であり父でもある岡沼 繁(しげる)さんが体調を崩されたため、急遽受け継ぐことになりました。

ほとんど下働きしかしていない状態での事業継承は、困難なことも多かったと宏和さんは振り返ります。先代の味を知る常連さんとのわだかまりがあったり、お客さん同士のトラブル対応をするはずがさらにヒートアップさせてしまったり……。料理人だけでなく、経営者としての対応も求められ、とにかくやれる範囲でできることを頑張ってきたのだそう。そして28年もの歳月を経て、今となっては「すべて経験になりましたね」と柔和な優しい笑顔を見せる宏和さんには、とても“がんこおやじ”感はありません。本人からも「私自身はまったく“がんこおやじ”ではありません(笑)」 とのコメントが。

店名である〈がんこおやじ〉は、宏和さんのことではないのでしょうか?

座敷席もあるため、小さいお子さんがいる方も、大勢での飲み会も対応可能。

実は、〈がんこおやじ〉に至るまで、何度か変遷を重ねてきたという同店。40年ほど前、初代店主の繁さんは、洋食屋さんとして〈キッチンむつ〉を営んでいました。その後、居酒屋となって〈むつ食堂〉や〈炉端焼きむつ〉と改名。当時は現在の〈がんこおやじ〉の敷地内に〈むつのれん街〉として、中心商店街にある横丁のように、小さなお店がたくさん立ち並んでいたのだそう。〈がんこおやじ〉の前身たちもそのお店のひとつだったといいます。知らなかった!

そんななか〈むつのれん街〉の形から、現在の店舗へリニューアルする際に、再度店名を考えることに。宏和さんのお母さんが、何個か店名を提案するものの、すべてしっくりこずに断る繁さんを見て「あんたは本当にがんこだな、もう“がんこおやじ”って名前にするんだ!」と一喝。すると、繁さんにとってはそれがぴったりとはまったようで、〈がんこおやじ〉という店名になったのだそうです。

「私は末っ子で、甘やかされて育ってきたせいか、父は黙々と仕事をする人としか思っておらず、“がんこおやじ”だと思ったことはありませんでした。でも母や姉たちはそう感じていたのかもしれませんね」と宏和さん。〈がんこおやじ〉とは、先代店主であるお父さんのことだったのですね。

そんな〈がんこおやじ〉のコンセプトは「がんこらしく、おやじらしく、湊らしく」。実はこの「らしく」とは、古くから陸奥湊エリアの小中学校で教育指針に取り入れられており、この地域の人々にとっては馴染み深い言葉なのです。湊町出身で、曹洞宗における日本一の僧侶・西有穆山禅師が残した書が由来となっており、同店の入口付近にも穆山禅師の書を掲げています。

岡沼さんにとっての「らしく」とは、一体どんな意味を持つのでしょうか。

「極論は『自分らしく』ということだと思っています。流行や噂話に惑わされず、自分らしさ、〈がんこおやじ〉らしさを大切に、お客さんに喜んでもらうために、あんまり肩肘張らずに頑張っていきたいと思っています」

湊町は中心街に比べると少しアクセスしづらいエリアです。それでも足を運んでくださるお客さんに、陸奥湊のおいしいものを提供し喜んでもらうこと。そして、そのために目の前の仕事に全力を注ぐこと。それが〈がんこおやじ〉らしさなのかもしれません。

これからも陸奥湊の居酒屋代表として、ずっと続いていってほしいです!

それはまるで陸奥湊の漁火のように。

長年陸奥湊エリアで商売をしている宏和さんにとって、忘れられないエピソードがあるといいます。

「東日本大震災が発生したとき、冷蔵庫や冷凍庫に入っていた食材を使用して炊き出しをおこなったときの話です。停電中でしたが、ガスと水道は使えたので、取引先の製麺屋さんにもご協力いただき、ワンコインで食べられるラーメンを提供しました。あのとき寒かったので、地域のみなさんに温かいものをお出しできればと思って。それを食べにきたおばあちゃんが、すっごい感動してくれたんです。そのときに陸奥湊から、料理を提供する店をなくしてはいけないなって思いましたね」

新型コロナウイルスや昨今の物価高の影響もあり、陸奥湊エリアでも閉店してしまった飲食店は少なくありません。「お食事のデパート」として約70年にもわたって地域の人々に愛された〈喜代志〉の閉店は、センセーショナルなニュースとしてみなさんの記憶にも新しいのではないでしょうか? 

〈喜代志〉閉店時に、店内に掲示されていたお知らせ。

そんな悲しいニュースが続いていた湊町にも、ここ数年では、新たな店がオープンしたり、駅前のイベントで賑わったりと、少しずつ盛り上がりの兆しを見せ始めています。もちろん〈がんこおやじ〉もイベントに協賛するなど、積極的に関わっているそうです。

「先代のころから何十年と代替わりしながらも通い続けているお客さんもいますから、これからも長く続けていくことで、〈がんこおやじ〉は陸奥湊エリアの光になりたいと思っています」と岡沼さん。そういった思いもあり、お店を照らす看板はビカビカと明るい照明を使用しています。

確かにとっても明るい。

今までもそしてこれからも、地域のみなさんに愛されるお店でありますように。〈がんこおやじ〉は海に浮かぶ漁火のごとく、今夜も陸奥湊の夜を照らしています。

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