公会堂1階のラーメン店。開放的空間で、煮干し丸ごと使った麺4種を食す。
本当に? 公会堂の…
1階ロビー奥に、
あった!
その名も〈ドラゴンラーメン〉!
入口でサクッと食券を買いまして。
最初に出てきたのが、看板商品の「濃厚煮干」。
「濃厚煮干」780円。鶏白湯に、煮干しをはじめサバ節なども使っただしを合わせて苦みやえぐみを抑え、食べやすく仕上げました。「特製濃厚」1,000円。(味玉・のり3枚トッピング+鶏・豚チャーシュー各2枚増量)もあるよ!
まずは見た目がインパクトあり。
同じ煮干しだしのラーメンといっても、透き通った醤油ベーススープに、かんすいバリバリの黄色い細縮れ麺の昭和的煮干しの使い方とはひと味違っているんですね。
こういったトロリと濃厚、クリーミーな煮干しスープを使ったラーメンを”セメント系”と呼ぶらしいですが、なるほど分かる気がします。
そして、ひと口目からワイルドに鼻孔を直撃する小魚の生命感。
1匹1匹は小さいが、みんなでチカラを合わせればこんなにも豊かな風味を発揮するんだナ! 筆者が今年初めてクラスを担任する教師だったら教え子に食べさせ、クラスのお手本としたいくらいの力強い香り。ワンフォーオール、オールフォーワンな旨さです。
続いては、メニューに「さっぱり」とあったので子ども用にオーダーした「淡麗白醤油」。
「淡麗白醤油」680円。煮干し、サバ節、カツオ節などでとっただしと白醤油を合わせました。ボリュームアップしたい方は「特製淡麗」900円。(味玉・のり3枚トッピング+鶏・豚チャーシュー各2枚増量)を。
単体で食べたらもちろん濃厚寄りだけれど、濃厚煮干と比べることでスープが若干サラリとしており、後味がすっきりしているのが分かる。イタリア人の中に阿部寛を置いたらそこまで濃くなかった……的な。
というか、この淡麗白醤油以外のメニューはみな“スープ”というよりもはや“ソース”という表現のほうがしっくりくる濃さなので、そこのところヨロシク。
というわけで、こちらは煮干初心者におすすめです。
3品目は「煮干まぜそば」。こちら、温かいのと冷たいのが選べるようです。
「煮干まぜそば」650円。煮干し油とごま油で和えた汁なし麺。特注ストレート麺の歯ごたえが楽しめる。「特製まぜそば」870円。(味玉・のり3枚トッピング+鶏・豚チャーシュー各2枚増量)もあり。
汁なし麺なため味わいさっぱり。しかし煮干しの香りはしっかり、香ばしい。そんな逸品。
たとえるならば、はじめはちょっととっつきにくいかな?って思ってたクラスメートが意外と話しやすかった、みたいな嬉しいギャップです。
いずれもチャーシューが鶏と豚、両方入っていて、しかも自家製! ふわっとした食感、やさしい味の染み方、大事に育てられたことが感じられる箱入り娘的チャーシュー群。
「おいしいものをちょっとずつ複数種類食べたい」が叶う布陣です。
さて、トリを飾るのは「トマニボ」。
「トマニボ」780円。低加水のストレート麺にトマト+鶏ベースの魚介スープが好相性。
その名の通り、煮干しとトマトのマリアージュ。これ大正解です。
煮干しのクセがトマトの酸味、甘み、フルーティな風味によりめっきり爽やかに。
昔は髪の毛ピンクとかだったのにママになってめっきりナチュラルかつ素敵な女性に成長した同級生のよう(筆者の周りにけっこういます)。
煮干しもトマトも旨味に関しては腕に覚えがある猛者同士ですから、一口目から分かりやすくおいしい。
まず粉チーズがかかっていないところを食べて本来の味を確認したのち、粉チーズを混ぜて味に変化を持たせる。そしてたっぷりかかったオニオンチップの香りをも楽しむのが王道でしょう。
そんな華やかな味わいに加えて、見た目がカワイイのも魅力かと思われます。
「いつも外食っていったらイタリアンなのよね」と言うオシャレな彼女と来店する場合には、ぜひこちらを食べさせてあげてください。
残ったスープはこのままでもおいしいですが、「リゾットセット」(200円。ライス・粉チーズ・フライドオニオン・トマトペースト)をオーダーすればリゾットに変身。
小魚だと思って油断してたらノックアウトされちゃった、煮干しストロングスタイル。
パンチ強めですが苦くなく、クセ強すぎずでバランスが取れているので、子どもウケもきっと大丈夫なはず。筆者家の4~10歳の子どもたちもおいしくいただいておりましたよ。
ブラジリアン柔術黒帯の公認会計士が地元でラーメン屋を開いた理由。
ここからは、ラーメンがもっとおいしくなる(かもしれない)〈ドラゴンラーメン〉開店のお話。
とある漢(おとこ)のお話です。
彼の名は龍。石動龍(いしどう りゅう)。
八戸市出身、在住。大学卒業後、都内で勤務しながら公認会計士・税理士・司法書士・行政書士資格取得。その後Uターンし独立。八戸市中心街にあるワイン専門店〈VIN+(ヴァンタス)〉共同経営者にして格闘技歴20年。ブラジリアン柔術黒帯保持。
そして、〈ドラゴンラーメン〉のオーナーです。
石動龍さん。
筆者にはこの異色のオーナーに聞いてみたいことがありました。会計法務事務所を経営し家庭もあり。忙しいはずなのに、なんでラーメン屋さんをはじめたのか?
ニコニコと笑顔を絶やさない石動さんの答えは「危機感と義務感」。
「家族や友だちと買い物して、おやつを買って、食事をして、服屋さんに行ったり、ゲームセンターに行ったり。まち(中心街)には楽しい思い出がたくさんあります。郊外のチェーン店は撤退して開店してを繰り返せるかもしませんが、こういう個人商店が集まったまちは、一度壊れたらもう戻らない。もう一度同じようなムードをつくるのは難しいだろうと思うんです」
人口が減る中、今まで通りのことだけしていてはまちがなくなってしまう……。「なんとかしなければ」という思いは、自身の3人の子どもたちが成長するにつれて増しているようです。
「このまま人が減り、店が潰れ、経済が破綻したら、次世代にあの楽しかったまちを残せません。自分たちの親世代までは経済状況が良かった時代。私たちはそんな時代を知っていて、かつ十分に社会経験を積んできた、いろいろチャレンジするのにちょうどいい世代だと思う。私たちが積極的にリスクを取って何かやらないと、次につながらないと思うんですよ」
売上に関わらず日々仕入れや人件費が発生する飲食業は、リスクの高い業種の代表格。自らその世界に飛び込むことで顧客の気持ちを知り、本業の会計士・税理士としてもより良い仕事をしたいという思いも、石動さんにはありました。
自分が住むまちのことを”自分事”として考えるだけでなく、1年かけて自らレシピを開発し、お店まで出す。そこには漢気(おとこぎ)を感じます。友人が運営する「こども食堂」でラーメンを提供したり、店内には「困っている人には無料でラーメンを提供します」との表示も。
地域のため実際に行動しているからこそ、「まず個人が幸せになれば人に優しくできる。そうやってみんなが優しい人になれば、まちが良くなる。世の中が良くなるんじゃないかって」と語る言葉がまっすぐに響いてきます。
全36席、店内にはベビーベッドや子ども用いすを設置。ファミリーや女性一人客も多い。
「愛は『北斗の拳』で学んだし、友情は『キン肉マン』で。将来はケンシロウになりたくて、それは子どもの頃からあまり変わっている気がしないです(笑)」と石動さん。
厨房に立つ石動さん。2021年7月には定番メニュー各種の冷やしバージョン(価格同じ)とかき氷(ノーマル100円/ミルク+50円/あずき+50円)がデビュー予定。
会計士・税理士として経営者をサポートしながら、週末には厨房に立つ背中は広くたくましく。まさに” 強くて優しいヒーロー”に、筆者には見えました。