現在、〈しんぼり〉の直営店は、JR八戸駅から車で約10分の場所にある八食センター内にあります。店舗には「チョコQ助」のほか、「南部せんべい」や「つるこまんじゅう」、「豆しとぎ」など、八戸で長く親しまれてきた銘菓が並んでいます。

八食センター内にある〈しんぼり〉直営店の様子。
今回取材で訪れた八戸市長苗代にある第2工場は、JR八戸線・長苗代駅から車で約7分。工場前には〈しんぼり〉の商品を取り扱う自動販売機が設置されており、工場直送の商品を購入できます。
自動販売機には、「チョコQ助」以外にもホワイトチョコレートを線状にかけた「白いチョコQ助」、新商品の「割れせん わさび味」や「ラー油 割せん」、せんべいの耳やこわれせんべいをチョコレートで包んだ「ガリチョコ君シリーズ」などが販売されています。

筆者も購入しようとしたものの、どれも気になる商品ばかりで優柔不断な性格が発動(笑)。6台並ぶ自動販売機の前を何度も行ったり来たりしながら悩んだ末、ようやく購入する商品を決めました。

今回購入したのは、こちらの4種類。「チョコQ助(左)300円」「白いチョコQ助(中央左)300円」はおやつにぴったり。「割れせん わさび味(中央右)280円」「ラー油 割せん(右)200円」はお酒のおつまみにも相性抜群です!
コロナ禍で部署存続の危機! 窮地から生まれた「チョコQ助」
今では八戸を代表するお菓子として知られる「チョコQ助」ですが、誕生したのは2021年のこと。実はこの商品、コロナ禍で直面した大きな危機を乗り越えるために生まれたのだそうです。
チョコQ助を開発した部署は、観光客向けのお土産商品の開発・販売を主に担っています。しかし、コロナ禍当時は観光客の姿がぱたりと途絶え、部門の売上は激減。従業員を休ませなければならないほどの状況にまで追い込まれたそうです。
「地元のスーパー向けに卸している和菓子部門はまだよかったんですけど、うちのお土産部門の売上は本当にゼロに近い状態で……。とにかく売上をつくるために何か手を打たなければならず、観光客向けではなく地元の方々に向けた商品開発に舵を切ることになったのです」
そう振り返るのは、〈しんぼり〉工場長の田村さん。当時のことを笑顔で話されていましたが、売上がほぼない状況のなかで商品開発に挑む日々は、想像以上に厳しいものだったはずです。

〈しんぼり〉工場長・田村弘文さん。入社17年目。「チョコQ助」の開発に立ち上げ段階から携わり、現在は製造ラインの管理や新商品開発の監督など、製造部門全体の統括を担っています。
開発のきっかけを伺ったところ、実は以前から、チョコレートを使った商品の開発構想があり、試作用のチョコレートが工場に保管されていたそうです。「じゃあ、そのチョコレートで何かできないか」ということで、南部せんべいとチョコレートを掛け合わせた試作品づくりが始まりました。
開発では、南部せんべい全体をチョコレートで包んだ試作品も作ったそうです。しかし、試作を繰り返すなかで、チョコレートを線状にかけるほうが、チョコレートと南部せんべい、それぞれのおいしさをバランスよく引き立てられることがわかり、現在の「チョコQ助」の形にたどり着きました。
完成した試作品を、田村さんご自身が口にした瞬間、「これはいける!」と、確かな手応えを感じたといいます。その後、開発メンバーにも試食してもらうと、その手応えは確信へと変わりました。
「試作品をメンバーに食べてもらうと、必ず『ここをこうしたらいい』という意見が返ってくるんですね。でも、このときばかりは、全員が満場一致で『これは、おいしい』と。そんなこれまでにない反応を見て、自信を持って商品化に踏み切れました」
当時はまだ誰も想像していなかったかもしれません。のちに八戸を代表するヒット商品となる「チョコQ助」の歴史は、ここから始まったのです。
最初はすべて手作業だった!? 地道な積み重ねが生んだ人気商品の原点
発売当初は、南部せんべいにチョコレートをかける作業から袋詰めまで、すべて手作業で行っていました。とにかく売上をつくるために、一つひとつ手探りで製造を続けていたと田村さんはいいます。
パッケージも特別なデザインはなく、ただ透明な袋に商品を詰めただけのシンプルなものだったそうです。今の人気ぶりからは想像もつきませんが、「チョコQ助」はそんなスモールスタートでした。

現在の「チョコQ助」。今ではおなじみのパッケージですね。地元向けの商品だったこともあり、中身がひと目でわかるシンプルなデザインを採用。お土産向けの商品であれば、化粧箱や外装で包み、中身が見えないかたちで販売されることが一般的です。飾り気のないシンプルなデザインも、「チョコQ助」が身近なお菓子として親しまれる理由の一つなのかもしれません。
発売すると商品はあっという間に完売したそうです。その様子を見た社長が、手作業では追いつかないと判断し、本格的な量産体制へのシフトチェンジを決断。しかし、現在の生産体制が整うまでの道のりは苦労の連続だったといいます。
「最初は、本社工場の一部を活用しながら、既存の機械を改良するところから始めました。でも、チョコQ助専用の工場ではなかったので、夏場になるとチョコレートが思うように固まらず……。他の製品と同じスピードで製造することができなくなってしまい、一時は販売をお休みしたこともあります。今では安定して製造できるようになりましたが、ここまでくるのは本当に大変でした」
華やかなヒット商品の裏側には、こうした地道な努力と試行錯誤の積み重ねがあったのですね。
現在では、本社工場に加えて第2工場・第3工場を備えるまでに規模を拡大。当初は5〜6人だった部門のスタッフも、今では数え切れないほどの従業員が製造に携わっているそうです。
若い世代にも愛される、新しい南部せんべいのかたち
青森県八戸市や岩手県北部を中心に、古くから食べられてきた「南部せんべい」。小麦粉・塩・水を混ぜて練った生地を、丸い鋳型で焼いた、素朴で親しみ深い味わいの郷土菓子です。
一方で近年は、お菓子の選択肢が増えたこともあり、若い世代が南部せんべいに触れる機会は少なくなっているといわれています。
かくいう筆者も、昔ほど南部せんべいをそのまま食べる機会が減りました。祖母は南部せんべいが大好きで、子どものころはよく一緒に食べていましたが、祖母が亡くなってからは自然と手に取る機会が少なくなっていたように思います。
そんな南部せんべいとの距離を、もう一度近づけてくれたのが「チョコQ助」でした。どこか懐かしく、それでいて新しい。そんな不思議な魅力が詰まっていて、一度食べ出すと手が止まりません。

「チョコQ助」と「白いチョコQ助」の盛り合わせ。おやつタイムに家族でいただきました。「白いチョコQ助」はバターベースの南部せんべいを使用しており、「チョコQ助」とはまた違ったコクのあるおいしさが魅力です。
「チョコレートの甘さと南部せんべいの塩気が合わさった甘じょっぱさが、多くの方に受け入れられた理由の一つではないかと思います。これまで南部せんべいをあまり食べなかった方にも手に取ってもらえるようになりました」
甘い×しょっぱい──まさに“禁断のコラボ”ともいえる組み合わせ。南部せんべいになじみの薄かった若い世代にとっても、驚くほど手が伸びやすい商品になったのではないでしょうか。
伝統を守るだけではなく、新しいかたちで南部せんべい文化を未来へ受け継いでいく。「チョコQ助」は、そんな役割も担っているように感じます。
※すべて取材時点での情報です。価格や最新情報は店舗へお問い合わせください。