〈八戸市美術館〉開館記念『ギフト、ギフト、』に込められた思いとは?レセプションで潜入調査してみた!【番町】

待望の〈八戸市美術館〉がオープン! 開館日前日に行われたレセプションにて、新美術館の楽しみ方、そして開館記念『ギフト、ギフト、』に込められた意味について聞いてきました。

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小田桐咲-amy-odagiri

1996年生まれ。直感と勢いで生きる牡羊座。青森県八戸市出身。5歳から武術太極拳(カンフー)を嗜んでおり、2019年の全日本チャンピオン。2026年のあおもり国スポでの優勝を目指し、20208月にUターン。『海猫ふれんず』として地元の情報も発信中。育ててくれた街や人に感謝して、その恩を返していけるように活動していきたいです。
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11月3日、ついに開館した〈八戸市美術館〉。その前日には、関係者・報道各社のみ招待されたレセプションと呼ばれるイベントが開かれていました。はちまち編集部も潜入したので、その様子をお伝えします。

開館を祝うお花たち。

レセプションは、小林眞前八戸市長や佐藤慎也館長など、美術館に関わる方々の挨拶や今回の開館記念『ギフト、ギフト、』のアーティストたちの紹介から始まり……

挨拶を述べる佐藤慎也(さとう しんや)館長。

テープカット!

市民が待ち焦がれていた、新しい〈八戸市美術館〉がついに開かれます。
テープカットのあとは一足先に、企画展示の内容を見させてもらいました。

 

八戸の文化を掘り起こす美術館の展示、その意図とは。

美術館の八戸市庁側の入り口、北エントランスを入ると広がる大きな空間。
ここは「ジャイアントルーム」と呼ばれ、どんな方でも無料で入場できる大きな空間となっています。

ジャイアントルーム。

展示コーナーは、北エントランスを背にして真正面、「ギャラリー1」と呼ばれる部屋からスタートしています。

今回の開館記念『ギフト、ギフト、』では、八戸三社大祭を出発点として、全4章の構成で展示されています。

「ギャラリー1」の八戸出身の切り絵作家・大西幹夫さんの作品から始まり、ギャラリー2、コレクションラボ、ブラックキューブ、ホワイトキューブと順路通りにそれぞれの部屋を観覧していきます。

それぞれの部屋のアーティストはこちら。

レセプションの内覧時は、各作品の前にアーティストがおり、それぞれ作品の説明をされていました。 なんという贅沢……!

さまざまなアーティストからお話を聞いて、作品についての理解が深まったところで、新美術館の建築設計を担当されたお一人の西澤徹夫建築事務所・タカバンスタジオ設計共同体の西澤徹夫(にしざわ てつお)さんを発見!

新しくなった美術館を、市民はどのように楽しんだら良いのかと質問してみました。

西澤徹夫建築事務所の西澤徹夫(にしざわ てつお)さん。

「この美術館は、名作の展覧会だけをやるような美術館ではないんです」

と、西澤さん。

美術館といえば、世間的に有名な作品が展示されていて、興味がある人が見にいくような、そんな場所を思い描きますよね。名作の展覧会だけをやる美術館ではない、とはどういうことでしょうか。

新しくなった八戸市美術館のコンセプトは、「種を蒔き、人を育み、100年後の八戸を創造する美術館〜出会いと学びのアートファーム〜」。それは、市民自らがこれからの八戸のまちをより良いものにしていくための「土台」となるような場所になるということでした。

この美術館では、市民が専門家から学んだり、仲間と集まって議論したり、はたまたまったく知らない人との話の中で何かが生まれたり……。そうした市民の活動により、八戸がもっと豊かになり100年先も続いていく“まち”になってほしい。

そんな思いが込められています。

そのために、私たち市民は、もっと八戸のことを知らなくてはなりません。理解しなくてはなりません。長く住んでいるからこそ、見えなくなってしまったものや忘れてしまった誇りがあるのかもしれません。

だからこそ、名作の展覧会をメインにするのではなく、八戸の文化・生活に縁のあるテーマやアーティストの作品を展示するのです。
あらためて、市民の皆さんに「八戸の誇り」を掘り起こしてもらうために。

こちらの西澤さん・浅子佳英さん・森純平さんの共同作品《八戸文化資源相関図》は、糸が繋がっており、壁面に飾られている作品や写真、模型、説明文たちは、八戸市美術館を中心として、必ずどれかと繋がっています。

例えば、八戸市美術館から出ている糸を左方面に追っていくと……

八戸三社大祭へと繋がっていきます。今回の開館記念『ギフト、ギフト、』が、八戸三社大祭を出発点として、八戸市民の生活や文化について触れている展示だからでしょうか。

さらに八戸三社大祭を左下に追っていくと、消防団・屯所へと繋がっていきます。火災の多かった八戸の町では、江戸時代に住民の自治組織である消防団の前身が発足したのだそう。消防団が地域コミュニティの中心となり、八戸三社大祭の山車組やえんぶり組へと発展していったのです。

そのさらに左端には、七尾 英鳳(ななお えいほう)が消防団のために描いた作品である『鍛冶町屯所の掛け軸』と繋がっています。
また、消防団・屯所の上には八戸火事年表が。こんなに火災が発生していたのですね。

ちなみに、八戸三社大祭の糸を右へ、右へと追っていくと……

今度はダンナ衆を経由して、花街・遊郭へと繋がっていました。それから糸は右へ進むほど浜通りの文化とも繋がり、漁業や工業、教育版画などと繋がります。

「この美術館を設計していくなかで見たり、聞いたりしたことの相関関係を表しました。いわば建築を含めた僕たちの成果展示のようなもの。でも、これでもまだまだ表面的なつながりだと思う」と語る西澤さん。

これを見る市民にとっては、自分が持っているつながりを思い出すきっかけとなるのではないでしょうか。
そして、観覧者のなかで埋め込んでいき、自分だけの「八戸文化資源マップ」を作り上げていくことが、この作品の完成形になるのかもしれませんね。

三社大祭の山車組の中心となった消防団の屯所模型たち。眺めていたら、見知らぬおじさんが隣で歴史を教えてくれました。こんな交流が起こるのも八戸市美術館の狙いのひとつなのかも。

この開館記念展では、10組のアーティスト、1組の浮世絵コレクションが、八戸市民の文化・歴史・生活を学び、そこからインスピレーションを受けて、制作され、選ばれた作品。八戸にいるだけでは気づけない、八戸の魅力がぎゅっと詰まっています。

 

『ギフト、ギフト、』の意味とは? 消費されてはいけない、私たちの文化。

内覧会最後の数分で、今回の企画展『ギフト、ギフト、』のディレクターである吉川 由美(よしかわ ゆみ)さんを発見!

吉川さんには今回の開館記念『ギフト、ギフト、』へ込めた思いについて聞きました。

開館記念『ギフト、ギフト、』のディレクター、吉川由美さん。

「どのアーティストも八戸市民の生活や生き様を取材し、お付き合いのなかで感じたものを作品にしています。ですので、八戸の皆さんにとっては親しみやすいものがたくさんあると思います」

〈はっち〉の文化事業ディレクターとして、2010年から八戸に通い続けている吉川さんは、八戸の文化について、「暮らしに密着するかたちで市民のなかに文化が息づいているのが特徴で、それは街のさまざまな場面で感じられます」と話します。

八戸三社大祭はその代表例。山車制作など祭りに参加する人は、ボランティアであるにも関わらず、市民の力をもって古くから脈々と受け継がれています。これはまさに先代からの「ギフト(=贈り物)」と言えるでしょう。

こうした八戸の文化は、お金では決して買えないものであり、消費できないものであり、消費されてはいけないもの。
そんな市民の文化が、八戸にはたくさんあるのだと、吉川さんは力強く語ってくださいました。

企画展のタイトルバック。

そして、こうしたギフトは循環しているのだと吉川さんは続けます。
「AからBへ、BからCへ、CからDへ。やがて回り回って自分に返ってくるというような大きなギフトの循環がそこにあるのではないかと思いました」

私たちは生活の中に根付いている八戸の文化を「ギフト」として受け取り、次に繋いでいく必要があります。

だからこそ今回の展示は、「渡して終わり、もらって終わり」の「ギフト」ではなく、「受け取り、繋いでいく・続いていく」ための「ギフト、ギフト、」と、「、」があるんですね。

 

「ギフト」のバトンを渡すのは、八戸に住むわたしたち。

「ギフト」と聞くと、多くの人が「贈り物」を思い浮かべるのではないでしょうか。

ギフトを贈るとき、思い浮かべるのは贈る相手のこと。しかし、それを喜んでもらえるかは受け取り手次第ですよね。

このことについて、私にも心当たりがあります。八戸から出たことがなかった学生時代、私もこの街には何もないと感じていました。八戸を出てからも、帰ってくるたびに廃れていく思い出の場所を、どこか他人事のように見ていました。

実家の写真を発見! 皆さんの身近な作品も見つかるかも。

しかしながら、2020年に八戸にUターンし、現在の八戸を支えている「大人」のみなさんの生き方や考え方、今まで知らなかった八戸の文化や歴史に触れて、八戸がなくなるのは嫌だな、と実感を持って思ったのです。

今回の企画展は、参加された11組のアーティスト・コレクションが、まさに私たち市民に向けて贈られた「ギフト」です。

八戸の生活・文化・歴史に触れて、八戸の誇りを思い出させてくれるとともに、「このままで良いのか?」と深刻な問いを投げかけてくれる展示となっています。私たち市民こそが観覧し、これからの八戸について考えていかなければならないのだと、強く思いました。

そして、「ギフト」とは、バトンのようなものなのかもしれません。

先代から受け継いだ「ギフト」=バトンを、私たち一般市民の力で次世代へと手渡していく。それが現代を生きる私たちの使命なのではないでしょうか。

前回の記事で不思議がっていた窓はやはり開放されていました! 中が見える!

この『はちまち』も、隣の「人となり」を知ることで、「隣の人にバトンを渡して、ハチマキのように強く大きく繋がっていく」という大きなテーマがあります。

商店街の変わらぬ文化や人々の思いを発信していくことで、繋いでいきたい。
そのような想いで運営してきます。

Photo:なつめ

公開日
Shop Info

八戸市美術館

住所
八戸市大字番町10-4
電話番号
0178-45-8338
営業時間
10時〜19時
定休日
火曜、年末年始
公式HP
https://hachinohe-art-museum.jp/
公式SNS

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