東京渋谷のコレクションが八戸に!3000年の歴史を辿る古代エジプト美術館展【八戸市美術館】

東京都渋谷にある日本唯一の古代エジプト専門美術館〈古代エジプト美術館 渋谷〉のコレクション約200点が、八戸市美術館に集結! 圧巻的なスケールの展示が話題となり、連日多くの来場客で賑わっています。本記事では、オープニングセレモニーの様子と取材を通して感じた古代エジプト美術館展の楽しみ方をご紹介します。

writer
片野秋子

青森県八戸市出身。関東で保育士として8年間、宿泊業界で2年間勤務したのち、地元・八戸へUターン。現在はフリーランスWebライター/編集者として、主に企業のオウンドメディアの記事制作に携わっている。
帰郷をきっかけに、八戸の自然や人の温かさ、地域の魅力を再確認し、地元をテーマにした取材・執筆にも力を入れ活動中。
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会期:2025年10月11日(土)~12月15日(月)

2025年10月10日(金)に行われたオープニングセレモニーには、熊谷雄一市長や主催であるデーリー東北新聞社社長の広瀬知明さんら約50人の関係者が出席しました。

古代エジプト美術館の巡回展は2023年4月にスタートし、9ヵ所目となる八戸市美術館が最後の開催地です。

古代エジプト美術館 渋谷〉館長の菊川匡(きくがわ ただし)さんからご挨拶があり、日本各地で巡回展を開催する想いが語られました。

「古代エジプト美術館は渋谷にしかありません。"都市部の人は見に来やすいけど、地方の人は来られない"このような状況をなくして、平等に見てもらえる機会を作りたいと思いました。
今回たくさんの方の力を借りてここ"青森県八戸市"での開催が実現でき大変嬉しいです。ぜひ青森県民の方々はもちろん、県外に住む方にも足を運んでいただきたいと思います」

〈古代エジプト美術館 渋谷〉館長の菊川匡さん。

遠方に行くことなく古代エジプトのコレクションを鑑賞できるチャンスは、なかなかありません。当美術館展は2025年12月15日(月)まで開催していますので、お時間あるときにぜひ足を運んでみてくださいね。

ここからは、今回の取材を通して感じた、古代エジプト美術館展の楽しみ方を3つご紹介します。

楽しみ方1.「博物館」ではなく「美術館」として鑑賞する

取材の中で「"博物館ではなく美術館"の名前にこだわりを持っている」と話す菊川さん。

エジプト展というと、展示物が整然と並ぶ博物館のイメージが強いかもしれません。しかし、古代エジプト美術館は美術的要素に重点を置いていると菊川さんは言います。

展示物はすべて日本人の考古学者や古美術商で著名なコレクター、陶芸家が収集したものです。日本人の感性や審美眼で選ばれた"美しいもの"ばかりが集まっています。

エジプト人が身につけていた首飾りや指輪。色鮮やかで細かい装飾のアイテムが多く、観ていて「わ〜、きれい〜!」とつい声が出てしまうほどでした。

厨子(ずし・王族や貴族の遺品を収める箱)の装飾品。モチーフとなっているコブラ(蛇)は、古代エジプト人にとって、強力な王の守護神だったそうです。はるか昔の時代に使われていたものが、今もなお形・色が鮮明に残っていることに驚かされます。

ミイラに被せるマスク。足から頭までセットで揃っており、綺麗な状態で残っているものは数少ないとのこと。金色は神様を表す色だそうです。光に照らされて輝きを放つ姿は美しいですね。

エジプト遺物を収集した方々はどういった想いで一つひとつの作品を選んだのでしょう。そのような背景に想いをはせるとまた違った楽しみ方ができるかもしれません。

楽しみ方2.小さな展示物から大きな展示物まで味わう

菊川さんが古代エジプト美術館展の見どころの一つに挙げているのが展示物サイズのバリエーションです。

展示物の中には、数cmほどの小さなものもあれば、直径およそ1.3mある柱の一部や全長およそ2mの木棺など大きなものもあります。

縦2cm、横2.5cm、厚さ0.3cmの聖牛アピス(プタハ神)を描いたモザイクガラス。近くまで顔を寄せないと牛の絵だとわからないかも…!

高さ70.5cm、直径138.0cmの神殿の柱の一部。柄がはっきりと確認でき、よく目を凝らすと茶色や青の色が残っている部分が見えます。

長さ196.0cm、幅80cm、高さ50cmの木棺。この中にミイラが入っていたと想像すると感慨深いものがあります。

小さな展示物では繊細な技術に驚き、大きな展示物では圧倒的な存在感に息を呑む、そんな対照的な面白さを味わってみてください。

楽しみ方3.古代エジプト3000年の歴史を学ぶ

古代エジプト美術館展には、先王朝時代からローマ支配時代までの遺物品が網羅的に展示されています。

一つひとつの展示物には、タイトルや制作された時代が明記されたキャプションを設置。一部には、モチーフや図柄の由来や刻まれたヒエログリフ(聖刻文字)の日本語訳も記されており、展示物の理解がより深まるような工夫が施されています。

また、古代エジプトの神々の特徴や能力がわかるパネルや時代の一覧表も展示されているため、どなたでも学びやすい環境です。

エジプトの代表的な神々が紹介されています。古代エジプト人は、世界や宇宙は創世神によって創造されたもので、そのあとに数多くの神々が誕生したと信じていたそうです。

古代エジプト3000年の歴史を示す一覧表。各時代の主要ファラオ(国王)や出来事が一目でわかります。

有料ではありますが、古代エジプトの歴史をわかりやすく解説してくれる音声ガイドもあります。その音声ガイドのナビゲーターを務めるのは俳優の酒井美紀さん。優しい声で語られる解説に、古代エジプトの歴史にそっと引き込まれます。

音声ガイド機器に、展示物下に記載してある番号と同じ番号を入力すると音声ガイドが流れます。クイズも用意されているので、ぜひ挑戦してみてください!

来館を通して古代エジプトの歴史を学び、古代文明の神秘に触れてみてはいかがでしょうか。

メイドゥム(マイドゥーム)の最新調査の様子も動画で見られます

「崩れピラミッド」として有名なメイドゥム(マイドゥーム)は、過去100年ものあいだ、学術的な調査がほとんど行われてきませんでした。

現在は、ドローンやレーザースキャナといった最新技術を用いた調査で、メイドゥム(マイドゥーム)の中の構造が少しずつ明らかになっているそうです。

順路最後に用意されている個室では、古代エジプト美術館発掘調査隊が現地で調査する様子の映像が流れています。また、崩れピラミッドの模型や内部の様子を3Dで映像化した動画も見られるので、最後まで楽しみましょう。

崩れピラミッドの模型。

時空を超えた旅に出かけよう!

館内には、特設ショップもあります。

古代エジプトを代表するツタンカーメンやクレオパトラのデザインが描かれたアイテムや、アヌビス(犬のような姿をした神)やスカラベ(神として崇められたフンコロガシ)をモチーフにしたアイテムなどが並んでいます。

美術的要素を重視した展示で違った楽しみ方ができる古代エジプト美術館展。本館は東京都渋谷にあるため、この機会を逃すとそう簡単には訪れることができません。

〈八戸市美術館〉で開催される古代エジプト美術館展の会期は、2025年10月11日(土)〜12月15日(月)です。

ぜひ会場まで足を運び、3000年の歴史を持つエジプトへ時空を超えた旅に出かけてみてください!

古代エジプト美術館展
会期:2025年10月11日(土)~12月15日(月)
会場:八戸市美術館 ホワイトキューブ、ブラックキューブ
休館日:火曜
観覧料:一般1,500円、高校生・大学生600円、小学生・中学生300円、未就学児無料
割引:障がい者手帳等をお持ちの方と付き添いの方1名は半額

公開日
Shop Info

八戸市美術館

住所
青森県八戸市大字番町10-4
電話番号
0178-45-8338
営業時間
10時〜19時
定休日
火曜、年末年始(12月29日〜1月1日)
公式HP
https://hachinohe-art-museum.jp/
公式SNS
その他公式ページ

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