ネット検索では出てこないお店も! 小中野エリアの飲み歩きレポート!【小中野】

かつては八戸の“花街”として栄えた小中野。歴史深さを感じるまち並みとともに、一見さんではなかなか入りにくいお店も多数存在しています。今回は生まれも育ちも小中野エリアという、純粋培養の小中野民・わかめ氏に、昼から夜まで飲み歩くツアーとして小中野を案内してもらいました! さぁ〜飲むぞ〜〜!!

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小田桐咲-amy-odagiri

1996年生まれ。直感と勢いで生きる牡羊座。青森県八戸市出身。5歳から武術太極拳(カンフー)を嗜んでおり、2019年の全日本チャンピオン。2026年のあおもり国スポでの優勝を目指し、20208月にUターン。『海猫ふれんず』として地元の情報も発信中。育ててくれた街や人に感謝して、その恩を返していけるように活動していきたいです。
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今回は、八戸市内の小中野エリアを巡ります。小中野といえば、かつて、東北一と謳われるほどの花街として栄えたまち。細い道かと思ったら急に広がる道路は、花魁が歩くための花道の名残です。また、表通りと呼ばれる通りに銀行がずらりと並ぶ姿は“小中野銀座”と呼ばれた最盛期の名残でもあります。

手前の細い道路から、突然開けた道が現れる。こんな道がいくつもある、小中野。

そのほかにもまちのいたるところに、その片鱗を残す小中野は、八戸市民からは「ディープなまち」というイメージを持たれています。

そんな小中野を案内してくれたのは、我らがはちまち編集部員であり、超絶怒涛の小中野民。小中野を愛し、小中野に愛された女ーーわかめさん!

今日はどんな案内をしてくださるんですか?

わかめ「小中野エリアはJR八戸線の小中野駅がありますし、中心街からのバスのアクセスもいいので、車を持っていない人や飲み会をしたい人も来やすいエリアです。ですので今日は、小中野で昼から夜まで飲み歩くコースをご紹介します!」

ひえ〜、発言が勇ましい! わかめ姉さん、ついていきやす!

 

昼から飲める町中華〈味楽軒〉で最初からクライマックス。

最初に案内してもらったのは〈札幌ラーメン 味楽軒 小中野店〉。〈小中野郵便局〉向かいに店をかまえる、いわゆる町中華のお店です。

カウンター席と小上がり席の両方があります。

メニューやポスター、絵画が入り混じっているためか、どこかカオスな雰囲気を感じずにはいられないレトロ風味な店内。私は初めて来たはずなのに、以前にも訪れたことがあるような、そんな気持ちになってしまいます。短冊メニューや壁紙が少し日に焼けた感じも、約50年もの長い間、お店を続けてこられた歴史を感じます。

店内を味わい尽くしたら、始めましょうか、昼飲み!

町中華といえば、小さいグラスに入れて飲む瓶ビール! 小中野駅から〈味楽軒〉までは約1キロで15分ほど歩きますから、そこに流し込むビールのおいしいこと! そしてわかめ氏おすすめのおつまみを注文。今回は「おつまみチャーシュウ」(450円)、「ギョーザ」(400円)を注文しました。手前に写る手羽先の煮込みと漬物はお通しです。

おつまみでのウォーミングアップもそこそこに、メインである〈味楽軒〉のラーメンを堪能していきます! 今回は「味噌五目ラーメン」(800円)と「海草ラーメン」(1,000円)を注文。

「味噌五目ラーメン」にはナルト、椎茸、豚肉、メンマ、そして野菜がもりもりに盛られたラーメンが登場。独自の味噌ブレンドでつくられた味噌味のスープは、寒い体を癒してくれる一杯となっています。野菜もラーメンも食べたい人におすすめです。

そしてわかめ氏の大本命〈味楽軒〉の「海草ラーメン」がこちら。

#海草とは

思わずハッシュタグをつけてしまったこちらのラーメン。実はどんぶりの奥底に海草が潜んでいるのかもしれないと思い、具を調べてみました。中には、大きいエビ、大きいホタテ、ベビーホタテ、イカ、つぶ貝、わかめ、メンマ、ネギ、しそ、ナルトが入っていましたが……いや、海草要素がわかめしかないッ!!

わわ〜、大きいエビさんだ〜〜!

店主の戸草内 勇一(とくさない ゆういち)さんに真相を聞いてみました。開業初期に生まれた「海草ラーメン」は、勇一さんのお父さんが名付けたラーメンなのだそう。商品名を変えるに変えられず改良を重ねた結果、現在の姿になりました。海藻だと思って油断すると、インパクトの大きい海の幸達に度肝を抜かれますので、お気をつけください!

机の上にずらりと並ぶおつまみとラーメンは、編集部3名で食べ尽くしました。〆のラーメンまで堪能してしまい、すでに大満足。え? こんな感じのお店にあと2軒回るの? 小中野、おそろしい子……!

バイクがお好きだという勇一さん。夏はバイク仲間とツーリングに行くこともあるのだそう。店頭に並ぶ戸草内さんのバイクとともにお見送りいただきました。ありがとうございました!

 

<shopinfo>

札幌ラーメン 味楽軒 小中野店
住所:青森県八戸市小中野8-12-29
電話番号:0178-22-5048
営業時間:11時30分〜15時30分、17時〜22時30分
定休日:毎月3日、13日、23日


 

検索しても出てこない!? 小中野町民御用達の老舗〈くになが〉であたたまろう。

〈味楽軒〉は15時30分で閉店のため、外へ出る編集部一行。多くの夜の店は17時か18時から始まりますので、夕方の時間帯は小中野ぶらり散歩するもよし、近くのカフェで甘いスイーツと共にひと休みし、夜の戦いに備えるのもよしです。

そこで、このあとの時間を満喫するための参考になりそうな、はちまちの小中野エリアの記事をご紹介。

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さて、そうこうしているうちに、日もすっかり暮れて時刻は18時。わかめ氏御用達の〈くになが〉へと出発します。

しかし筆者には不安がありました。それは「くになが 八戸」「くになが 小中野」で検索しても、Googleマップの掲載がなく、ホームページやSNSの類もヒットせず、ほとんど情報が出てこないのです。デジタルネイティブ世代の筆者としては〈くになが〉が本当に実在しているのかにわかに信じがたい。

それぞれのサイトを開いてみても詳細な情報は手に入らなかった。

とりあえず意気揚々と歩くわかめ氏の後ろを、訝しげについていきます。〈味楽軒〉のあたりからスタートし、表通りを中心街方面へ歩いていくと、暗い夜道にポツンと光る「くになが」の文字が!

ここが〈くになが〉か! 本当に実在していた!
わかめ氏に続いて我々も入店していきます。

中に入ると、ママの津子(つこ)さんが「こんばんは〜」と優しい笑顔で迎えてくれました。柔らかな笑顔にほんわかしているのも束の間、わかめ氏は入口付近の冷蔵庫から、流れるような動きで瓶ビールを取り出したのです!

わかめ「はいこれ、お願いします!」
ママ「はーい(素早く瓶を開け手渡す)、どうぞ〜」

ちょちょちょちょーい! どういうシステムなんですかこれは。

わかめ「常連さんたちは自分で冷蔵庫から飲み物をとって、ママに渡し、開けてもらいます」

なんという“行きつけの店”感……! 何度でも通いたくなるあたたかさが〈くになが〉にはありました。あ、ちなみにこれ、入店30秒のできごとです(笑)。

店内唯一のボックス席に着席して〈くになが〉での時間を楽しんでいると、同じような流れで入店していく人ばかり。しかも世代も性別もバラバラの人たちが続々と集まっていき、隣り合った人同士で穏やかな時間を過ごしていく風景に、小中野民たちの第二の実家のような安心感があるお店なのだと気がつきました。

〈くになが〉の名物は焼き鳥。カウンターにある網焼きにマッチで火をつけ、一本一本丁寧に焼いてくれます。こちらは「ねぎま」。

こちらは「精肉」のタレ味。網焼きでじっくり焼かれた食べ応えばっちりの精肉にかけらるのは、20種類以上の野菜やスパイスなどの素材を掛け合わせた〈くになが〉特製のタレです。甘めのタレが食べるたびに食欲をかき立てます。

そして〈くになが〉のもうひとつの名物といえば「玉子焼き」。ポン酢をかけて楽しむのが〈くになが〉流! 焼き鳥の合間に、さっぱりとした玉子焼きを挟むことで、お酒がどんどん進みます。

〈くになが〉には料金表はありませんが、黒板メニューと瓶ビールは基本500円です。お通しは300円〜400円。そのときの仕入れ状況に応じて値段が変わるので、お値段が気になるときはママに聞いてみてください! 優しく教えてくれます!

今年で85歳になったというママは、お話し上手で、カラッとした笑顔が素敵な方です。実はママの本名は、“律子(りつこ)”という名前なのだそう! 役所に登録する際に間違えて“津子(つこ)”という名前になりそのままに。本人は「もういいやって感じ」とのこと(笑)。

そんなママは、1956(昭和31)年に制定された売春防止法により、遊郭で栄えていた小中野のまちが大きく変わる局面も目の当たりにしてきました。それに伴い、治安維持のための深夜営業店の取り締まりなども非常に厳しかったといいます。今でこそ夜遅くまで明かりをつけてお店を開いていますが、お客さんと共に、息を潜めて警察が過ぎ去るのを待ったこともあるそうです。

そんな歴史深いリアルな話を聞けるのも〈くになが〉の醍醐味。文献で読むよりも、当時を生きた人から聞くと、解像度が高く当時のことを理解でき、非常に面白かったです。さらに、もしあなたが〈くになが〉へ行く機会があれば、「ママのドロボー撃退話」もぜひ伺ってみてください。こちらも非常にスリリングなお話でした。話の引き出しの多さよ(笑)!

帰りも見送ってくれたママ。

ちなみに〈くになが〉のトイレは、一度外に出て、店の裏側を回ったところにあります。トイレ前の庭の植物たちは非常に綺麗に並んでいるのですが、これらはすべて、ママが整えているのだそう。飲みに行かれた方はぜひ、庭の植物たちにも注目してみてくださいね。ただし、汲み取り式のトイレなので、酔っ払ったときはスマホを持っていくのはおすすめしません。

 

<shopinfo>

くになが
住所:青森県八戸市小中野5-13-4
電話番号:0178-43-1460
営業時間:18時〜23時頃
定休日:月曜日

 

 

〈やまちゃん〉で店主の創作料理を楽しもう!

さて、小中野飲兵衛ツアーもいよいよ大詰め。〈くになが〉を出て中心街方面へ、表通りを歩いていきます。最後のお店は、オレンジの建物〈キクヤ食堂〉の隣に店をかまえる〈居酒屋やまちゃん〉です。

昼に撮影した外観。

入店すると、こちらでもまた、店主の竹中輝男さんがにこやかにお出迎え。

とりあえず瓶ビールを注文。着席するやいなや、お通しが出てきました。

お通しで3品も出てきたことに驚きながらも、家庭料理的な優しい味わいにほっこり。さて、何を注文しようかとぼんやりしていると、カウンターから続々と料理が出てきました。

千切りキャベツの上にはベーコンエッグが乗り、ナポリタン、カツやエビフライなどの揚げ物、そしてトマトがワンプレートに乗っています。

さらに、焼かれた厚切りのサラミハムにカレーがついたものも出てきました。どの料理も味がはっきりしていてお酒にぴったりで、3軒目の深夜に食べるには背徳感を感じてしまうほどのボリューミーなメニューたち……。それでは聞いてください。

「瓶ビール以外まだ注文してない」

そう、私たち、瓶ビール以外まだ注文していないのです。これはどういうことなんですか、マスター!

竹中さん「今度わかめさんが来るときに出そうと思って準備していました」

驚きのホスピタリティです。マスターのホスピタリティはここでは終わりません。料理を楽しみながらわかめ氏と歓談していると、マスターが何も言わずに芋焼酎のボトルとお湯割りセットを用意。こ、これは……?

竹中さん「いつも芋焼酎飲んでいるので、そろそろかなと」
わかめ「いつもはグラスでお願いしているんですが、ついに今日お湯割りセットで出されてしまいました、わはは!」

わかめ氏の常連っぷりも去ることながら、マスターの高いおもてなし力に驚きを隠せません。お客さんの様子を見ながら、食べたいものや飲みたいものを伺えるように気を配っているのだそう。だって私たちもまだ、瓶ビール以外何も注文していませんから……(笑)!

ちなみにお料理の価格はそのときの仕入れによって変わりますが、基本的には500円から。メニューもマスターの作りたいもので変わるそうです。

こちらはメニューにあった「台湾風豚の角煮饅」。もちろんメニューの商品も出してくださいます。

昔から創作料理をつくることが好きだったという竹中さん。以前は「じぃじの台所」という名前でブログもしていたのだそう。現在も、素材から組み合わせを考えたり、思いついたレシピをネットで調べてみたりと、創作料理の研究は日々欠かせません。

同店にはメニュー表ももちろんありますが、竹中さんが出したいと思った料理を出すこともしばしばあります。「おいしいものを食べてほしい!」 という気持ちが根底にあるからです。だから私たちにもどんどんお料理を出してくださったんですね! 全部おいしかった!

創作料理なだけに、提供に時間がかかってしまうこともありますが、待ち時間すら愛しく思える料理が出てきます。それが〈やまちゃん〉!

取材だというのに浮かれて共にカウンターを囲むお客さんたちとも会話が弾みます。小さな店内があたたかな雰囲気に包まれ、小中野の夜はさらに更けていくのでした。

 

<shopinfo>

居酒屋やまちゃん
住所:青森県八戸市小中野4-2-1
電話番号:090-4478-4678
営業時間:18時〜0時頃
定休日:火曜日

 

 

今回はゆっくりお店を回りましたが、公共交通機関を利用する場合は、八戸駅方面への終電は21時45分。中心街方面への終バスは21時47分頃となっています(2024年12月現在)。

飲みに行くとなると中心街で集まって飲む人が多いかと思いますが、小中野にはディープな店がまだまだありそうです。一次会を小中野で、二次会は公共交通機関を利用して中心街へ、というコースもありかもしれませんね。

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