※閉店※〈南部食彩生パスタRit.〉で、地元の食材を利用した“郷土愛”溢れる一品を。【三日町】
〈味のめん匠〉と経営者を同じくする〈ポータルミュージアムはっち〉の2階に位置する〈南部食彩生パスタRit.〉。地元の食材をふんだんに使った、誰もがほっこりとしてしまうパスタは絶品です。
〈味のめん匠〉と経営者を同じくする〈ポータルミュージアムはっち〉の2階に位置する〈南部食彩生パスタRit.〉。地元の食材をふんだんに使った、誰もがほっこりとしてしまうパスタは絶品です。
前回の記事では、〈味のめん匠〉の八戸らーめんについて紹介しましたが、実は〈味のめん匠〉の店主下村和仁さんが、中心商店街内でさらにもう1店舗かまえていることをご存知でしょうか?
それは〈ポータルミュージアムはっち〉の2階にある、〈南部食彩生パスタ Rit.〉です。
天井からつり下ろされたいか提灯が見守ってくれています。
〈めん匠〉では自家製麺を使用している下村さん。ラーメンが作れるのなら、パスタも作れるのでは? と、最初は遊びでパスタ作りに挑戦していたのだそう。
その後、〈めん匠〉のお客さんにもパスタラーメンで提供するなどして試行錯誤を重ねた結果、パスタが完成! そこで、ご自身の過去の経験を生かして、生パスタのお店をオープンしたのだそうです。
まずはカウンターにて注文を済ませ、〈Rit.〉のカウンター、もしくは近辺のテーブル席にて料理が運ばれてくるのを待ちます。
今回注文したのは、一番人気の日替わりパスタセット「まり姫牛のわがままボロネーゼ」1,000円。
日替わりパスタセットは、2種類のパスタから1品、8種類のサイドメニュー中から2品選べるようになっています。
今回は、大人気の「新鮮野菜のミニサラダ」と「ミニロール+ミニトースト」を選択。
日替わりパスタメニューは1カ月単位で既に決めており、一覧表が店頭にあります。食材の使い残しがないように計画を立てているのだそう。季節感溢れる飾りが超かわいい。
カウンター席からは、キッチンの中がよく見えるため、目の前で注文したメニューができあがっていく様子を見ることもできます。わくわく。
どんどんできあがっていく私のボロネーゼ……! じゅるり。
そしてついに完成!
〈毬姫牛〉の大きな粒が宝石のように輝くボロネーゼソース。ほんのりと赤ワインの風味がするソースと、その隣に鎮座しているチーズやクリームソースとの組み合わせは、まさに“わがまま”ボロネーゼを体現しているようです。2種類のソースの香りが筆者の鼻腔をくすぐり、食欲をかき立てます。
自家製のフィットチーネ(平麺)は、八戸で生産されている南部小麦を使用。もちもちと食べ応えがあり、南部小麦の特徴である小麦の甘みや香りをしっかりと感じました。
また、セットのパンはホテルの朝食バイキングやレストラン等で提供している八戸市の〈こむぎ工房〉のパンを使用。塩気のきいたオリーブオイルとの相性は抜群で、何個でも食べられそうなくらいのおいしさでした。
「子どもの頃は郷土愛とか感じなかったけれど、一度地元を出てから地元の良さをすごく実感した」
と語る下村さん。
厨房で調理している店主の下村和仁さん。
下村さんの出身は、鹿児島県徳之島。八戸には2000年に移住してきました。
地元を離れたことにより、地元の良さを実感したその一方で、故郷から送られてきたものを八戸で食べたとき、自分の記憶の中にあるようなおいしさを感じなかったのだといいます。
そこで気がついたのは、その土地でできたものを、その土地で食べることが、一番おいしいということ。
移住してきて約20年。出身は八戸ではないけれど、八戸に対する“郷土愛”が確かにあると、下村さんは語ります。
生まれ故郷を愛するということは、その土地を愛するということ。八戸で生活する者として、八戸の土地を理解し、この土地でできた食材をどうおいしく料理してやろうか? と考える気持ちは、下村さんが故郷を思う気持ちと変わらないのです。
パスタランチで選べるパン。オリーブオイルとの相性が最高に良い。
そしてそれは、紹介した2店舗の経営にも表れています。
八戸らーめんの鶏ガラや煮干しは八戸のものを使用しており、海鮮類が必要な時は六日町の魚屋さんである〈福真〉から購入。
他にも、パスタランチで選べるパンは八戸市の〈こむぎ工房〉のもので、ボロネーゼで利用されている〈毬姫牛〉は、八戸市市川にある〈イチカワファーム〉のものです。
「まり姫牛のわがままボロネーゼ」で使用されているイチカワファームの〈毬姫牛〉。迫力がすごい!
また、食材だけではなく、地域のお店と協業することもしばしば。
同じく〈ポータルミュージアムはっち〉内に入っている〈CHEESE DAY〉や〈八戸ブックセンター〉とのコラボメニューは、お客さんの中でも非常に注目度の高いメニューになっているそうです。
今回の取材で、〈めん匠〉と〈Rit.〉の料理をいただきましたが、お腹だけではなく胸もいっぱいになるような気持ちになりました。
それは、下村流“郷土愛”に満ちた料理だったからなんですね。
一品の料理として提供されるまでの、生産者、流通者、そして料理人のみなさんたちのお顔が浮かぶようです。会ったことないけど!
突如カメラ目線をくださった下村さん。ありがとうございます!笑
六日町振興組合の理事もなさっている下村さんに、今後の中心街についても伺ってみました。
「いい店を作れば、人が集まってくる。それぞれが自分の商売をしていれば、自然といい街になっていくんじゃないかと思うんだ」
下村さんが経営している2店舗でいうと、現在お客さんが来てくれているからといって、このままでいけば将来安泰というわけではない、と下村さんは語ります。常に挑戦を続けていかなければ、お店自体を続けていけないと厳しいお考えです。
さらに新型コロナウイルス感染拡大により、テイクアウトや宅配サービスなど、飲食店に求める人々のニーズは変わりつつあります。
しかしながら、そういったサービスは一部取り入れつつも、対面の接客・サービス業にこだわったサービスや商品を提供していきたいと、下村さんは強い思いを持っています。
いい店を作ることも、店を続けることも容易なことではありません。何か派手なことや大きな変革だけが、店を作るわけでもありません。
お客さん、サービスや商品、そしてお店に対する熱い思いと、地道に積み重ねていく努力が、いい店を作り、そして続けていくことができるのかもしれません。
みろく横丁の六日町の入り口に位置する〈味のめん匠〉。
「だから僕は一生懸命ラーメンやパスタを作るだけ。お客さんにとっての“おいしい”を提供していくだけなんだ。そしてお客さんには、ただ『うまい!』と思ってもらって、もう1回来てくれたら、それでいい」
そんな風に笑う下村さんは、今日もただただ「おいしい」を作って、あなたが来るのを待っています。