“裏”プロデューサーは八戸のおじいちゃん。〈フォーラム八戸〉で映画『AKAI』が上映中。

2023年1月5日に閉館が決まった〈フォーラム八戸〉で、赤井英和さんのドキュメンタリー映画『AKAI』が上映中だ。10月2日(日)には赤井英和さんと、八戸市出身の妻・佳子さん、そして本作の監督をつとめた息子・英五郎さんが登壇したトークイベントも開催。『はちまち』では3人へのインタビューを行った。

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栗本千尋-chihiro-kurimoto
『はちまち』編集長。1986年生まれ。青森県八戸市出身(だけど実家は仙台に引っ越しました)。3人兄弟の真ん中、2人の男児の母。旅行会社、編集プロダクション、映像制作会社のOLを経て2011年に独立し、フリーライター/エディターに。2020年8月に地元・八戸へUターン。

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〈フォーラム八戸〉での公開を記念し、トークショー付き上映会を開催。

 左から、赤井佳子さん、英和さん、英五郎さん。

“浪速のロッキー”の異名で日本中を熱狂させた、赤井英和さん。映画『AKAI』は、そんな赤井さんのボクサー現役時代の貴重な映像や、過去の出演映画『どついたるねん』などをまじえ、本人のインタビューとともに公開するドキュメンタリー。9月9日より順次公開がスタートし、東北での上映も急遽決定した。「赤井英和の嫁」としてTwitterで話題の佳子さんが八戸市出身であったことがきっかけとなり、〈フォーラム八戸〉での上映が決まったという。

『はちまち』では以前、佳子さんにインタビューし、赤井さんとのなれそめを聞いていたが、そのご縁で、〈フォーラム八戸〉での公開を記念したトークイベントにご招待いただいた。

当日、トークショー付き上映会の行われた会場は満席。佳子さんのホームグラウンドであるため、かつての同級生や知り合いなども多くつめかけた。

質問コーナーも設けられ、佳子さんがふたりのなれそめについて話すシーンも。

ホテルの真っ暗な部屋の奥のほうから、浴衣がはだけてフルチンで出てきたのが初対面。『それを見て一目惚れした』と人に話すと『なんで!?』って反応をされてきたんですが、今日の映像を見ていただいたら、わかっていただけたんじゃないかな。ギラギラした感じに一目惚れして。私、超がんばったんですよ。結婚していないのに大阪の西成にある実家に押しかけて……」

長くなるので、と話はそこで終わったが、会場へ行って続きが気になった方はぜひ『はちまち』の記事を読んでほしい。

 

 

「赤井さんの映画をみた」。八戸のおじいちゃんからの最後の言葉。

トークイベント後、インタビューのお時間をいただいた。

プロボクサーでもある英五郎さんにとって、本作が初めての映画監督作品となった。そのきっかけは、コロナ禍でのステイホーム。

「どこにも行けないし、誰にも会えないし、暗いニュースばかり流れている日々が数ヵ月続いていました。自分も親もどうなるかわからなかったので、『人生最後の日になにをしたいだろうか』と考えたときに、お世話になった人へ感謝の気持ちを伝えたいと思ったんです。僕は映画が好きなので、映画というかたちで感謝を伝えられたらと」

そうして制作をスタートしたものの、「完成してもすぐに公開しなくてもいいかもしれない」と考えていたという。しかし、「絶対に公開しなくてはならない」と使命感にかられるような出来事があった。

昨年の11月末、八戸に住んでいた母方のおじいちゃん(佳子さんのおとうさん)が膵臓がんになったことが判明したのだ。

英五郎さん「今後どういうふうに治療していくかを話し合うために東京へ来てくれたんですが、そのときはまだ元気だったんです。アメリカにいる弟もそのときは帰ってきていて、久しぶりに家族みんなで集まりました。おじいちゃんは12月に八戸へ帰り、入院したんですが、一気に体調が悪くなって……」

佳子さん「入院してからは2週間で亡くなったんですが、体が丈夫だったので、これが最後になるだなんて思っていなくて。病室に私だけ入れたとき、意識が朦朧として幻覚を見ていたようなんです。そのときに『今赤井さんの映画を見てた、いい映画だった。もう一本つくろうとしているみたいだけど、苦労しているようだな』と言っていました」

『はちまち』のインタビューで佳子さんが「結婚を反対されていた」と話していたので、意識が朦朧とするなか、義理の息子の幻覚をみていたと聞き、赤井さんとの良好な関係が築かれたのだと思うとグッとくるものがあった。

英五郎さん「それを聞いて、『きっとおじいちゃんがみたというのは僕がつくっている映画のことだ!』って思ったんです。作中では父の出演作『どついたるねん』や、世界挑戦で入場曲にした名曲『ロッキーのテーマ』を使用させていただいたのですが、阪本順治監督も、作曲家のビル・コンティ氏も、熱意を伝えたところ快諾してくださったんです」

 

〈フォーラム八戸〉で上映が決まった理由。

当初は赤井さんの出身地である大阪の人に観てもらいたいと、関西圏を中心に全国30館の上映が決まっていたが、たまたま〈フォーラム八戸〉が閉館すると知った英五郎さんの強い希望により、東北での上映が急遽決定したという。

英五郎さん「3ヵ月前、久々に土日が空いているタイミングがあって、思いつきでおばあちゃんに会いに、八戸へきたんです。そのときに母の妹から〈フォーラム八戸〉がなくなってしまうと聞きました」

ビル解体に伴い、2023年1月5日に閉館が決定した〈フォーラム八戸〉。

実は、英五郎さんにとって〈フォーラム八戸〉は、おじいちゃんとの思い出の映画館。

英五郎さん「幼稚園か小学校低学年だったか……幼いころ、おじいちゃんと映画を観にきたことがあったんです」

そのときのことをはっきり覚えている、と、同館の支配人である晴山努さんは話す。

晴山さん「おじいさまとはよくお話しをさせていただいていたんですが、そのときは『この子が赤井英和の息子だ!』って、楽しそうに教えてくださいました」

佳子さん「こないだ知った話なんですが、父は『シニア料金みたいなものをつくってほしい』とお願いしたみたいなんですよね」

実際に、現在〈フォーラム八戸〉ではシニア割引が設定され、60歳以上は1,200円で観覧することができる。

英五郎さん「この映画館がなくなってしまうと、八戸の人は郊外まで行かないと映画が観られない。若い人はいいかもしれませんが、おじいちゃんやおばあちゃんのようなシニア世代の人たちは、車を運転できないとなかなか行けなくなってしまうじゃないですか。ここで『AKAI』を上映してもらえたら、おばあちゃんやその兄弟にも気軽にきてもらえるんじゃないかなと思い、閉館を知ったその場で母に電話していました」

そうして佳子さんが〈フォーラム八戸〉にかけあったことで上映が叶い、さらに東北のほか地域での公開も決まった。

ポスターの写真は、篠山紀信氏が撮影した赤井さん。同じポーズをリクエストすると、「服はこのままでええんか?」と、サービス精神旺盛に応えてくださった。

最後に、それぞれコメントをいただいた。

英五郎さん「今回映画ができた“裏”プロデューサーは、八戸のおじいちゃん。八戸で生まれた作品だと思っています。ぜひ八戸のみなさんに観ていただきたいです」

佳子さん「こんな強いボクサーがいたんだよ、というドキュメンタリーだと思われがちなんですけど、人生の映画です。みなさんの人生を応援できるような映画になっていますので、それが伝わればうれしいです」

赤井さん「『ロッキー』とかいろんなボクシングの映画ありましたけど、ほんまのボクシングの試合、実際のなぐりあいが見られる迫力や感動は、この大スクリーンで、この音で、見る値打ちがあると思いますので。見るたびに新しい発見があると思います。また、見る位置によってもちゃうんですよ。声を大にして、お願いします!!!

(本当にテキストになってしまうのがもったいないくらい大きな声を出していただいたので、大きい文字でお届けした)

〈フォーラム八戸〉での公開は、10月13日(木)まで。
まだ観ていない人は、英五郎さんとの思い出が詰まった映画館でぜひ観てほしい。

 

フォーラム八戸 上映情報

https://www.forum-movie.net/hachinohe/movie/4258

公開日

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