
海辺の喫茶店〈カフェ&ギャラリーうみ音〉で、 八戸の日常を見つめれば。【鮫町】
きらめく海に佇む、八戸のシンボル〈夢の大橋〉と〈蕪島〉。〈カフェ&ギャラリーうみ音〉では、ランチやスイーツを味わいながら、八戸の日常をゆったりと眺めたり、アート作品を鑑賞したりしながら、特別な時間を過ごすことができます。橋を行き交う車、沖にゆく船、蕪島へと舞うウミネコたち——。刻々と変わるその景色は、何度訪れても新しい発見があります。うみ音で過ごすひととき、あなたの目に映る八戸はどんな顔をしているでしょうか。
きらめく海に佇む、八戸のシンボル〈夢の大橋〉と〈蕪島〉。〈カフェ&ギャラリーうみ音〉では、ランチやスイーツを味わいながら、八戸の日常をゆったりと眺めたり、アート作品を鑑賞したりしながら、特別な時間を過ごすことができます。橋を行き交う車、沖にゆく船、蕪島へと舞うウミネコたち——。刻々と変わるその景色は、何度訪れても新しい発見があります。うみ音で過ごすひととき、あなたの目に映る八戸はどんな顔をしているでしょうか。
盛岡市在住。八戸市の浜育ち。広告代理店の営業経験を経て、2024年春からフリーのライター兼フォトグラファーに転身。
家族が実家を引き払い岩手へ移住したことで、生まれ故郷に帰る場所がなくなった2022年。旅をするような感覚で、はちまち取材を通じて八戸のことを再度勉強中。好きなものはレトロなものとフィルムカメラと、イカドンと八戸の空気。
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2008年6月、鮫町にオープンした喫茶店〈カフェ&ギャラリーうみ音〉。運営するのは、八戸で漁業・加工・流通を幅広く手がける〈福島漁業〉です。オーナーの福島美登利さんは、こんな想いを込めてこの場所を形にしたといいます。
「昔はね、八戸には喫茶店が多くて、集まれる場所がたくさんあったの。ここ何十年かでだんだんと減ってしまって。だから喫茶店をやりたかったんです。自然のなかでゆっくり過ごせる、東京からお友達が来ても紹介できるような、そんな場所にしたかった。ここから見えるものは変わらないかもしれないけれど、季節の移ろいだけでなく時間によっても、見え方は変わるんですよ」
晴れた日には八甲田を見ることができるそう。
行き交う船、橋の上を流れる車——。天候だけでなく、まちの暮らしそのものが、この景色を形どっているのだと気づかされます。
「冬は雪が降るからあまりみなさんいらっしゃらないけど、実は冬の山や海は澄み切っていて、ものすごく素敵なんですよ」と、美登利さんは微笑みながら語ります。この景色を目当てにはるばる遠方から来るリピーターさんも多いそうで、それが美登利さんの喜びに繋がっています。
そんなうみ音ではこの絶景だけなく、ちょっぴり贅沢なランチやスイーツメニューを味わうこともできます。今回は金〜日曜限定の「松花堂弁当」を注文してみました。
松花堂弁当(1,900円)。スイーツとコーヒー付き。イカ焼売の黒酢餡掛け、天ぷらの盛り合わせ、ちりめんじゃこと鮭の混ぜご飯、サバ・イカ・サーモンのお刺身など、豪華なラインナップ。
福島漁業が実際に水揚げしたイカとサバは、甘みと旨みが強く、身はしっかりと弾力が。その鮮度の高さに、思わず八戸出身であることを誇らしく感じました。
食事メニューは、メインディッシュとご飯が選べる「本日のおすすめランチ」と、1日10食限定の「絶品イカメンチ丼」もラインナップ(どちらもサラダ・お味噌汁・コーヒーまたは紅茶付きで1,500円)。
食後のデザートには「ベルギーワッフルセット」(1,200円)を注文。サクッとしたワッフルに、香り豊かなバニラアイスと甘酸っぱいミックスベリーが添えられた一品。軽やかな味わいで、あっという間に食べきってしまいました。
カフェメニューは、ケーキセットやパフェ、ドリンクも充実。風が穏やかな日はテラス席も開放されているので、浜風を感じながら大自然のなかでひと休みすることもできます。
景色や食事に加えて、店内にある展示ギャラリーの作品を鑑賞できるのも、うみ音ならではの魅力。
クリスマスやひな祭りの時期には、美登利さんはご自宅から装飾品を持ち寄り、展示ギャラリーを華やかに彩ります。イベント以外の時期に貸し出されるその空間は、なかなか空きが出ないほどの人気ぶり。創作活動に励む作家の方々にとって、大切な発表の場となっています。
「私も以前、ポーセリング(※食器に絵を施すアート技法)をしていて、銀行のロビーを借りてお披露目したことがあったんです。だからこそ、何かを作っている人にとって“発表の場”がどれだけ大切か、よくわかるんですよね。八戸にはそういう場所が少ないのもあって、作家さんたちにとても喜んでいただいています」
美登利さんの作品はどれも繊細な筆致で、上品なものばかり。曲面にこんな綺麗に描けるなんてすごい……。世界にひとつだけのカップで、コーヒーをいただきました。
あいにく取材で伺った日は、ちょうど展示の切り替え時期。どんな作品と出合えるのか、次回訪れるときの楽しみがまたひとつ増えました。
八戸を代表する〈蕪島〉と〈夢の大橋〉、そしてきらめく海。この町に住んでいた頃から好きな風景ではありましたが、あの頃以上に愛着を感じている自分がいます。私が今暮らしているまちも、自然が豊かでとても美しいまちです。一方で高層マンション建設の計画が進み、大好きな風景をいつもの場所から見れなくなってしまうことも少なくありません。
景色は誰のものでもないけれど、そのことに寂しさを感じずにはいられないときがあります。だからこそ〈カフェ&ギャラリーうみ音〉から見える、変わらないでいてくれるこの眺めに、思わず胸がいっぱいになりました。
大切な人たちを連れて、またこの景色を見にきたい。そう思える風景が、ここにはありました。