老舗青果店が開いた正統派〈フルーツ&パーラーODAWARA〉。目利きが選ぶ旬のフルーツで左党も開眼。【内丸】
パフェにサンデー、アラモード。華やかなデザートたちが揃うお店といえば喫茶店、そしてフルーツパーラー。本八戸駅から中心街に向かう通称“ほんぱち坂”にも、老舗青果店が開いたフルーツパーラーがあります。八戸Uターン歴15年ながらも未体験の筆者が触れたフルーツパーラーの魅力、お届けします。
パフェにサンデー、アラモード。華やかなデザートたちが揃うお店といえば喫茶店、そしてフルーツパーラー。本八戸駅から中心街に向かう通称“ほんぱち坂”にも、老舗青果店が開いたフルーツパーラーがあります。八戸Uターン歴15年ながらも未体験の筆者が触れたフルーツパーラーの魅力、お届けします。
セブンイレブン八戸市庁前店斜め向かいにある〈フルーツ&パーラーODAWARA〉。
「フルーツパーラー」、甘美な響き。
が、筆者は不肖ながら入ったことがございませんでした。
理由は、左党(「酒飲み」という意味ですね。左手で盃をくいっと持ち上げながら!)だから。そして、高級感のあるキラキラしたイメージに気後れしてしまうから。
ですから今回の取材はかなり緊張しておりましたが。
「いらっしゃいませ!」
ホールスタッフ3年目の深川澄華(ふかがわ すみか)さん。「お客様との出会いが楽しい仕事です。ご希望に沿えるよう厨房と一緒になって考えるのが、大変だけどやりがいがありますね」とか。
と明るく迎えるスタッフ深川さんのスマイルに癒されました。
そういえばここ〈フルーツ&パーラーODAWARA〉は、八戸市内で割烹料理、和食、寿司、デリバリーなど7店舗を展開する「おだわら・萬鱗グループ」の一員。昭和40(1965)年、青果店〈小田原青果〉からはじまった同グループは、厳選した旬の食材にこだわり、かつおもてなしにも力を入れている……と、ホームページに偽りなしです。
そしてグループの原点であるフルーツを、より広く楽しんでもらおうと1996年にオープンしたのが〈フルーツ&パーラーODAWARA〉。つまりすでに25年の歴史がある。
「フルーツパーラー」という言葉はよく聞きますが、ODAWARAの場合、店名は「フルーツ&パーラー」。フルーツ販売と喫茶店を〝&〟で対等につないでいるところに、青果店としての矜持を感じます。
さて店内に足を踏み入れると、旬のイチ押しフルーツがお出迎え。7月初旬の取材時は、ジュエリーのように輝くさくらんぼでした。
大粒で甘みが強く、ハート形のフォルムがかわいらしい青森県の新品種さくらんぼ「ジュノハート」は、残念ながら売り切れ……といっても、1箱2万円では筆者には手が出せませんが(泣)。
フルーツギフト1篭2,160円~。
ショーケースにはその他にも上質なフルーツがずらり。ギフト用なら、この中から好きなものを選んで詰め合わせることもできます。
また、ジャム、ゼリー、ジュースといった加工品から、焼き菓子などのオリジナルスイーツも充実。
「グラン・プテイユ」1個330円。
ショーケースの中には生クリームを使った定番ショートケーキにロールケーキ、ジュレにムース。常時20種類以上のケーキが並び、鮮やかな色彩にあふれています。
フルーツのピューレ入り生クリームや果肉を巻き込んだロールケーキ(各450円)など。素材の持つ味わいを生かしたケーキが揃う。
色とりどりで目にもおいしい、一番人気の「フルーツタルトデコレーション」5号(直径15㎝)2,850円~。カスタードクリーム使用で生クリームが苦手な人にもおすすめ。
一口サイズが嬉しい。お茶の時間にぴったりの「フルーツサンド」には、チョコクリームとバナナ、イチゴが好相性の「チョコクリームサンド」、パイナップルがアクセントの夏期限定商品「トロピカルサンド」もあり。各1パック4切れ入りで520円。
芳醇な香りに包まれ、カラフルなフルーツの中に身を置いているだけでふつふつと幸せホルモンが分泌されるのですが、フルーツパーラーの醍醐味はやはりイートインです。
入口向かって右側に位置するイートインスペースは通りに面したウインドーが開放的。フルーツの色彩が映える白が基調の空間です。ここでイートイン人気ナンバーワンの「フルーツミックスパフェ」をいただきました。
毎朝仕込む手作りフレッシュイチゴソースと旬のフルーツを贅沢に盛り合わせ。「フルーツミックスパフェ」1,000円。
とろける食感のマンゴーは夏の味。
常時10種類以上の旬のフルーツを盛り合わせ。季節ごとに内容が変わるので、何度食べても楽しめそうです。この日はマンゴー、パイン、スイカ、ブルーベリーなどが入っていましたが、とにかく、すべてのフルーツの味が濃い。
特に、筆者が毎日のように口にするバナナ、キウイあたりは味の違いに軽くカルチャーショック。ふだん食べているものももちろんおいしいんですよ。おいしいんだけれど、濃厚さ、みずみずしさ、食感のどれをとっても、ちょっとこれは別格。
そして食べ進むと顔を出すのは、双子のアイスと生クリーム。
「生クリームにはこだわってます」とホール責任者の大沼智沙子(おおぬま ちさこ)さんがおっしゃる意味が、よく分かります。
アイスクリームの甘さに負けない深いコクがありながら、同時にフルーツを引き立てるさっぱりとしたキレの良さも持ちあわせる。まるで存在感がありながら抑えた演技ができる名バイプレイヤーのごとし。複数のクリームをブレンドして作るそうで、配合はもちろん企業秘密です。
一皿の上でそれぞれが役割を果たし、全員キャラが立っているこの感じ、例えるならば主役級を集めたハリウッド映画のごとしです。
暑い日にはプルンプルン食感で溶けにくいフルーツゼリーアイスをどうぞ。「フルーツゼリーアイス 濃厚いちご」(左)290円、「フルーツゼリーアイス ミルクフルーツ」260円。このほか「フルーツゼリーアイス ジューシーパイン」260円もあり。おうちデザートなら「プリンパフェ」870円、「バナナシェイク」530円(オーダー10時~17時)などテイクアウトメニューがおすすめ。
このおいしさの秘密は適材適所の分業にあり。
まず仕入れ。
ODAWARAには選果の専門スタッフがおり、毎朝、市場から果物を買い付けています。市場では競りが行われるので、選果には品質を見極める目と、交渉力や度胸も必要。選果スタッフは数年間の修業期間を経て競りデビューするとか。
次に調理。フルーツスイーツはフルーツパティシエ、ケーキはパティシエが担当し、食材の良さを引き出して仕上げています。
そして最後にホールスタッフがサーブ。グループ全体で「ときめきをかたちに」をコンセプトに掲げ、サービス研修を行っているそうです。
あらためて店内を見渡すと老若男女。カップルにマダム、他にも女子高校生がお喋りしていたり、小さな子ども連れのママや、パフェを頬張る孫を見守るおじいちゃんの姿があったり。
ここに、フルーツの懐の深さを見た気がしました。
「甘いものが苦手」という人は一定数いる。しかし、特定の種類の果物を苦手な人はいても、「フルーツ全般が苦手」という人は、そういえば見たことがない。筆者自身、甘いものはそこそこだが、フルーツは毎日のように食べている。栄養と水分がたっぷりで、体にいいのは周知の事実だから。
創世記にリンゴ、古事記にモモ、ギリシア神話にザクロ。
神話の時代からずっとそばにある自然の恵み。
だから、お見舞いにも、お礼にも、季節の挨拶にも、フルーツ。
恩師にも、友人にも、取引先にも、フルーツなのだ。
こんな当たり前のことに、今さらながら気づきました。
……って、何だか壮大なまとめになってしまいましたが、イートインして左党も開眼。
人を選ばず幸せにする、フルーツっていいね。誰と行っても、いつ行っても、あまねくみんなが笑顔になれる場所、それがフルーツパーラーです!
「果物の新しい食べ方を提案していけたらと思います」と前出の大沼さん。ODAWARAではシーズンメニューや新メニューの開発にも力を入れているそう。お店のSNSで最新情報をチェックして、出かけてみてくださいね。