八戸の伝統工芸“南部裂織”を、守りたい想いで繋ぐ〈工房「澄」〉【三日町】

2011年、八戸市中心街にオープンした〈八戸ポータルミュージアムはっち〉。「ものづくりが元気になれば、まちも元気になる」──そんな想いから生まれたのは、4階のものづくりスタジオ。開館から店舗兼工房を構えるのは、八戸の伝統工芸“南部裂織”を制作する工房〈澄〉です。 そこには、“ひと”の想いを受け継いでいく姿がありました。

writer
wakana

2025年開催【ライター養成講座】受講修了者

1983年生まれ。青森県八戸市出身。イベントや楽しいことが大好き。3人の子育てを経て、現在は夫婦デュオ「OTOMEOTO」として音楽活動をしています。MBTI診断はENFP広報運動家。動物占いはペガサス。好きな食べ物はスパイスカレーと焼き芋。

Instagram

はっちが開館した2011年から、ものづくりスタジオに入居する、〈工房「澄」〉。
八戸を代表する南部裂織作家で、青森県伝統工芸士の井上澄子(すみこ)さんが立ち上げた工房です。

南部裂織とは、江戸時代に生まれた技法で、着古した着物や布を細く裂いて織り、新しい布へと再生させる伝統工芸のこと。

緯(ぬき)。南部裂織に使用する緯糸(よこいと)。着古した着物などを細く裂いたもの。

経糸(たていと)には、木綿糸を使う。工房には赤や緑など鮮かな糸が並ぶ。

現在、井上澄子さんから引き継いで代表を務めるのは、岩淵洋子さん(2025年12月青森県伝統工芸士認定)。最初は井上さんの生徒だったといいます。

「90歳を迎えた井上先生から、2023年に工房を任されるようになりました。現在は、生徒だった仲間たち9人でこの工房を守っています」

南部裂織で仕立てたベストを着る、代表の岩淵 洋子さん(右)。仲間の一人である岩間 輝さん(左)。

仲間たちがつくる作品が並ぶ。巾着やポーチ、雑貨などは実際に手にとり購入することができる。

守り続けるために

「この工房を守っています」……“守る”というキーワードが出たのには理由が。手間も時間もかかり、技術も必要なので、後継者が不足しているからです。

「なくしたくない、って思いがあるから、私たちのあとに続く“ひと”を育てていきたいんです」と語る岩淵さん。

そのため、ここでは南部裂織の体験にも力を入れています。工房の隣には、地機(じばた)という織り機があり、予約なしでいつでも体験ができるのです。国内だけでなく海外からの観光客も体験するそうで、南部裂織の魅力を世界に発信する場所になっています。

体験は、コースター(11cm×12cm) 30分/700円。花瓶敷(17cm×20cm) 50分/1,300円。

コースター。自分の好きな糸で織ることができるから、世界にひとつしかないものが出来上がるのも魅力だ。

これはぜひ体験してみたい! と、初心者の私でも織れるのか聞いてみました。

「少し時間はかかるけれど、機(はた)に足が届く小学4年生くらいから、どんな方でもできますよ。好きな生地を持ち込んで織ることもできるので、いつでもどうぞ」と微笑む岩淵さん。

お気に入りだった布や、すぐに小さくなってしまう子どもが着古したTシャツなんかでも、裂織の糸として再利用できるんだそう。テープ状に細く裂くことができれば、どんなものでも再利用できてしまう南部裂織。もしかしたら、令和だからこそできる作品も生まれるかもしれません。

「南部裂織りんご」のストラップ(800円)。

“新しい命”を吹き込む。

色とりどりの作品が並ぶ工房にいると、細やかな手仕事で出来上がっているのがわかります。南部裂織を織り上げるだけではなく、さらに縫い合わせ、金具をつけたり組み合わせて作品にしていくとても根気のいる作業なのです。

作り続けて21年目になる岩淵さんに、その南部裂織の魅力をたずねました。

「古い着物が、新しいものに生まれ変わるのって、なんだか素敵でしょ。使われなくなったものが、全く違うものに生まれかわる。それが、みなさんのお役に立てるって素敵じゃないですか」

隣で見守っていた仲間の岩間さんと、楽しそうに微笑みます。

「今だに、経糸(たていと)と緯糸(よこいと)の組み合わせによって、いろんなものができるから、おもしろいの」と岩間さん。

好きだからこそ続けられた“ものづくり”。南部裂織の伝統は、そんな“好き”という想いで繋がっているのだと感じました。糸選びから、ひとつひとつ丁寧に織っていく南部裂織。すぐには出来上がらないからこそ、より愛着が湧き、心惹かれるものへと姿を変えていく……。そしてその想いは、たくさんの“ひと”に伝わっていくにちがいありません。織ることは、今の私たちに必要なことを教えてくれます。

 

公開日

まちのお店を知る

最近見たページ