「手羽先のコショー揚げ」が絶品! 人見知り店主のいる〈居酒屋 点〉。【岩泉町】

〈ゆりの木通り〉にひっそりと佇む小さな飲食店〈居酒屋 点〉。噂に名高い「手羽先のコショー揚げ」に導かれ訪ねると、そこにはおいしい料理と、人と人とがゆるやかにつながるあたたかな時間が流れていました。さあ、今夜はあなたもこの“点”とつながってみませんか?

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小田桐咲-amy-odagiri

1996年生まれ。直感と勢いで生きる牡羊座。青森県八戸市出身。5歳から武術太極拳(カンフー)を嗜んでおり、2019年の全日本チャンピオン。2026年のあおもり国スポでの優勝を目指し、20208月にUターン。『海猫ふれんず』として地元の情報も発信中。育ててくれた街や人に感謝して、その恩を返していけるように活動していきたいです。
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〈ローソン 八戸長横町 ゆりの木通店〉から、国道45号線方面へ向かい徒歩2分。訪れたのは、大きな木彫りの看板が目印の〈居酒屋 点〉です。

なんでも〈点〉の「手羽先のコショー揚げ」がうまいという評判を聞きつけてやってきた筆者。恐る恐る店内に入ります。

ドアを開けると店主の山田修(おさむ)さんが静かに招き入れてくれました。言葉少なめな山田さんにごあいさつを済ませ、とりあえずカウンター席に座り、生ビールを注文。料理は「手羽先のコショー揚げ」とあとはおすすめをいくつかお願いすることに。

店内はカウンターが6席、小上がりが8席の計14席。冬は小上がりにこたつが登場し、一度入ったら抜け出せない席になります。おそろしや。

最初にやってきたのは「刺身盛り合わせ」(1,100円)。
分厚い刺身が、1種類1枚ずつ乗せられています。どの種類も新鮮で、厚切りゆえの満足感たるや! 魚の旨みを噛み締めながら食べ進めます。

最初は薄めに切って提供したそうですが、食材が残ってしまうことが多かったため、今では厚めに切って提供するようになりました。時期にもよりますが、基本的には7〜8種類の魚を盛り合わせています。刺身の名前は経木の切れ端に書かれており、どれがどの魚なのかが一目でわかります。最初に聞いてもすぐに忘れてしまう筆者にとっては、嬉しいサービスです!

次にやってきたのは「手羽先のコショー揚げ」(650円)。待ってました!!

〈点〉の「手羽先のコショー揚げ」は、甘めの特製すきやきダレに3日間漬け込んだ手羽先を揚げ、黒コショウを振りかけた一品。肉の旨みに特製ダレの甘さがマッチしつつも、黒胡椒の辛さが料理全体に締まりを出し、口のなかで甘いと辛いが融合していきます。ビールやハイボールに合いそうです。これまた最高の酒のつまみを見つけてしまいました……!

そして肉の大きさにもご注目ください! 大きめの手羽先は肉部分もあり、揚げてパリパリになった部分も食べ応え抜群です。さらにタレの味が染み込んだ手羽先は、骨まで“さずって”食べてしまうほど。確かにこれは絶品です!

最後に運ばれてきたのは、「生そばでつくった油そば」(700円)。
〈熊さん製麺〉の手切りそばを使用したこちらの「油そば」は、ナンプラー、唐辛子などで味付けをしているため、少し辛め。麺は太かったり細かったりと、手切りならではのばらつきがあり、食感に変化があるのも面白いです。しなやかなコシのあるそばは、〆にぴったりでした。

 

小さなお店だからできること。お客さんの声を聞く店づくり。

1996年に開業した同店は、当初長横町で営業していました。ですが、常連客が増えたことや新型コロナウイルスの流行を理由に、現在のお店に移転しました。移転してみて、率直にどのように感じていますか?

「こっちのお店の方が気に入ってるよ。なんたって、お客さんの顔が見れるのがいい」と山田さんは答えます。

長横町にあった店は2階建てで約60席ほどあり、宴会の利用なども多かったそう。接客はアルバイトスタッフに任せ、自分自身は厨房でひたすら料理をつくることがほとんどでした。

一方で、現在のお店はわずか14席の小さなお店。料理をしながら、カウンター越しにお客さんの様子を見ることができます。

「例えば『さきいか天ぷら』は、最初は塩をかけてなかったんだよ。でも、お客さんがみんな塩を振って食べるから、提供時に塩を振るようにした。そしたらみんな喜んでくれたんだ。そういうことに気が付けるから、今のお店の方が気に入ってる」

さきいか天ぷら(650円)。

イカ珍味の有名店〈花万食品株式会社〉から直接仕入れたさきいかを天ぷらにしたもの。サクサクの衣とふわふわ柔らかいさきいかの食感が見事なバランスで重なり合い、リズムよく食べ進めてしまいます。

そしてなんといっても、こちらの「さきいか天ぷら」は、塩加減も絶妙なのです。さきいかの旨みと塩味が後を引き、酒、さきいか天ぷら、酒、さきいか天ぷらの永遠ループに陥ってしまうほどです。

なるほど、この塩加減はお客さんの行動からヒントを得て生まれたものだったのですね。

こちらは「紅生姜のかき揚げ」(350円)。こちらもお客さんとの会話のなかで誕生したメニューなのだそう。

「紅生姜天ぷら」自体は大阪府などの近畿地方のソウルフードですが、〈点〉では「紅生姜のかき揚げ」としてアレンジ。紅生姜をみじん切りにして揚げたもので、揚げ物ですが紅生姜のさっぱりとした味わいが強く、口のなかがすっきりとして、箸休めにぴったりです。提供当初は、玉ねぎを一緒に揚げていたそうですが、お客さんから「玉ねぎは要らない」と言われ、現在は紅生姜のみになりました。

「規模が小さいお店にしてからは、食材の調整も簡単でお客さんの様子を見ながらメニューを変更することもできるようになった」と山田さん。お客さん一人ひとりの要望に応えようとする山田さんの真摯さが〈点〉の魅力のひとつでもあります。

 

でも実は人見知り!? 「いらっしゃいませ」と言って入店する常連客たち。

そんな魅力がある〈点〉ですが、実は店主の山田さんは、極度の人見知りなのだそう。

「ご新規さんには、緊張して声かけられないんだよね、『いらっしゃいませ』も言えない(笑)」

常連客のなかには自ら「いらっしゃいませ〜」と言って入ってくる人や「ただいま」とまるで我が家のように入ってくる人もいるそうです。確かに私も入店した際、「いらっしゃいませ」を言われなかった気がするぞ……? あれは人見知りしていたということですか!?(笑)

初めて入る方にとっては、山田さんは少しドライな印象を与えてしまうかもしれません。ですが、話しかければたくさんお話しくださいますので、ガンガン話しかけてみてください! 筆者も退店するころには、少し仲良しになって帰らせていただきました(笑)。

店内は土足厳禁。靴を脱いであがるところにも実家感があります。

また、山田さんは、以前八戸市内初のドッグカフェを開いたご経験があったり、登山をしていたり、サップの先生をやっていたりと多方面で活躍されています。店内には各方面のいろんなチラシやポスターなどが貼られています。

それらを見て、たまたまそこに居合わせたお客さん同士がつながることがしばしばあるのだそう。それは〈居酒屋 点〉の店名の由来にもつながっています。

メニューを手に取ろうとしたら、はちまちにも寄稿いただいているスズキミノリさんの「トセノイエ通信」が。

「〈八戸東高校〉の脇を歩いていたら、夜空に星が点々と輝いていて。星はつながると星座になるでしょう。その光景が、うちの店でお客さん同士がつながっていくさまに似ていると思った。なかなかいい名前が思いつかなかったから、これからもつながっていくようにと願いを込めて〈点〉にした」

うーん、なんて素敵な由来。
私もはちまちで記事を執筆させていただいてから、約70もの人や店舗に取材をしてまいりましたが、ひょんなことから意外な人とつながることが何度もありました。

つながるってあたたかいことだと感じます。あたたかいことは、頑張る勇気をくれます。そうして私の人生は、たくさんのつながりによって、輝かされているのだと常々思います。

あなたも八戸の夜に輝く「点」のひとりになってみませんか。
今夜、この出会いが、あなたの人生をさらに輝かせてくれるかもしれません。

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