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小説にも登場したブックバー。本と、仲間と、AND BOOKS。【十六日町】
街の外れには、「いい店」があるものです。気になるけど、なかなか入るチャンスがない……勇気を出して入ってみたら、ついつい長居しちゃった。 「いい店」の定義は人それぞれですが、「入る時の勇気」と「入ってからの居心地の良さ」のギャップもその店の魅力ではないでしょうか。もしかしたら〈AND BOOKS〉も、あなたにとってそんな店になるかもしれません。
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10席の店内に本が2,500冊!
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店に入ると、10席ほどの狭い店内に2,500冊の本が並ぶ異空間。腰を低くして本を物色している人もいれば、本など気にせずおしゃべりしている人もいます。本のある空間で、それぞれ自由に過ごしてほしい……オーナーの本村春介(もとむら しゅんすけ)さんは、〈AND BOOKS〉という店名にそんな思いを込めました。
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お酒やソフトドリンクもいろいろありますが、こだわりはスコッチ。その数なんと80種類! ストレート、ロック、トワイスアップに、ハーフロック……スコットランドの地図が載ったメニュー表を見れば、産地や飲み方がわかるようになっています。「スコッチは独特な薫香が魅力」「若い人たちにもスコッチの楽しみを見つけて欲しい」と本村さん。一杯700円から1,100円と、メニュー表にはわかりやすく記載されています。
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お店の看板メニューは「キーマスパイスカレー」(950円)。野菜の旨みが感じられるベジブロス(くず野菜からとったダシ)と、オリジナルブレンドのスパイスで仕上げました。「誰もが食べられるように、辛くないように作っている」そうです。本棚にはカレーの本もたくさんありますよ。
すべて手作りの「古本屋のようなバー」。
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「古本屋のようなお店にしたかった」と本村さん。DIYも好きだそうで、工事現場の足場板で作ったオリジナルの本棚には、お酒の本から、食、カレー、歴史、猫の本もあれば、映画、小説、仏教、さらには本の本まで!
2,500冊すべてを読んだわけではないそうですが、本選びにはこだわりがあって、装丁や、手触り、タイトル……ピンときたものを「買って、並べて、順番に読む」。そして、並んでいる本を愛でる! これが、電子書籍にはない魅力なんだとか。「自分の部屋もこんな感じです」と話していました。
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本村さんがお店を開こうと決心したのは2017年11月。若い頃から古本屋を開きたいという夢を持っていましたが、会社勤めということもあって、半分諦めていたんだとか。でも、人生は一度きり。そう思う事が重なって、後悔したくないという気持ちが大きくなり、本村さんを突き動かしました。
お酒も料理も好きだし、DIYも好き、そして何より本が大好き。雑居ビルの2階スペースをすべて自分で改装し、脱サラから1年も経たない2018年7月15日にオープンした店は、本とお酒が楽しめる古本屋のようなバーでした。
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本好きだけでなく作家さんも訪れるお店。なんと小説にも登場!
オープンからの2年半。本村さんは「サラリーマンをしていたら出会えなかった人と知り合えた。今は楽しいし、充実している」と振り返ります。その最たる存在が2016年に八戸市六日町にオープンした〈八戸ブックセンター〉。全国的にも珍しい市営書店で、本に触れる人・関わる人を増やすまちづくりを進めています。
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AND BOOKSのオープンは偶然これと重なって、本村さんが思ってもいなかった相乗効果が生まれました。
八戸ブックセンターのディレクションを担当した内沼晋太郎さんや、小説家の柴崎友香さん、滝口悠生さんなど、八戸ブックセンターを訪れた憧れの人たちが次々と来店。想像もしなかった出会いが続きました。
そして、常連客も少しずつ増え、20~30代の若いお客さんと一緒にキャンプを開いたこともありました。
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さらに、小説の中にお店が登場したことも!
『小説推理』の2021年2月号に掲載された櫻木みわさんの読切小説『まぼろし北寄(ほっき)』で、主人公の冴映(さえ)は差出人不明の手紙と東北新幹線の切符を受け取り、見知らぬまち「八戸」に向かうことに。六日町の鮮魚店でホッキを眺めていると若菜という女性に声をかけられます。いろいろ話して打ち解けた二人は、一緒に〈AND BOOKS〉を訪れるのですが……。おっと、結末はぜひ〈AND BOOKS〉で読んでみてください。
7月には「分室」がオープン??
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思い切って脱サラして3年5ヵ月。若いころから本が大好きだった本村さんの人生を良いほうに導いたのは、やはり本だったようです。
本は一人で読むもの。でも、その本の先に新しい出会いが待っていました。
これからのことを聞くと「細く長く、現状維持で」と控えめに答えますが、この7月には、お店の向かい側に〈AND BOOKS分室〉がオープン予定。この分室では、誰にも邪魔されずに読書したいという人のために、もっと読書に集中できる空間を目指しています。
お好きなドリンクを頼んで、じっくりと読書に浸りましょう。古本を買うこともでき、定期的にトークイベントも開いて行く予定です。
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本が人と人とをつなぐ、“街の外れのいい店”〈AND BOOKS〉。これからも楽しみが少しずつ広がっていきそうです。
あ、そうそう、お店の名前の「AND」は「安堵」とかけているそうです。なんか落ち着くんですよね、このお店。『まぼろし北寄』を読み終えた後にこの原稿を一気に書き上げちゃったのも、そのせいかも。