〈味のめん匠〉の懐かしい昔味、八戸らーめんで温まろう。約100年の歴史ある「おいしい」をあなたに。【六日町】

ひとくち食べると、幼少の頃を思い出すような、懐かしい味のする八戸らーめん。こんな寒い冬にこそ食べたい地元料理ナンバーワンです。今回は地元の人だけではなく、観光客からも人気の高い〈味のめん匠〉を取材してきました! 昔懐かしのおいしさの秘密に迫っていきます。

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小田桐咲-amy-odagiri

1996年生まれ。直感と勢いで生きる牡羊座。青森県八戸市出身。5歳から武術太極拳(カンフー)を嗜んでおり、2019年の全日本チャンピオン。2026年のあおもり国スポでの優勝を目指し、20208月にUターン。『海猫ふれんず』として地元の情報も発信中。育ててくれた街や人に感謝して、その恩を返していけるように活動していきたいです。
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八戸市内もすっかり冬の空気に包まれています。氷点下の空気は、一歩外に出ただけでも私たちの肌を突き刺してくるようです。

そんな寒さの中、みろく横丁の裏通り側の門のすぐ左手で輝くのは、「ラーメン」の赤ちょうちん。
八戸らーめん専門屋台〈味のめん匠〉です。

雪がちらつく中心商店街で輝く、まさに希望の光……!

店主の下村さんより提供。

 

スープの優しさに涙。懐かしの八戸らーめんで心も体もぽっかぽか。

お店に入ると、充満する湯気が、氷点下の世界からやってきた私たちを優しく出迎えてくれました。みろく横丁ならではのこぢんまりとした空間に、どこか安心感を覚えます。

注文はもちろん、「八戸らーめん」650円!

煮干しと鶏がらをメインにスープを取り、あっさりしょうゆ味に仕上げています。
麺は自家製の細めちぢれ麺で、具材はチャーシューとネギとメンマのみ。昔ながらのラーメンを彷彿とさせる、シンプルなラーメンです。

絶対に飲んだ後の〆に恋しくなるこのスープ。

なんといってもこのスープですよね! くどくなく、かといってあっさりしすぎているわけでもなく、じわぁっと体に染み渡っていくような、優しい味わいです。
店主の下村和仁さんいわく、スープを炊く温度や煮干しを炊く時間にこだわって作られているのだそう。

食べ進めていくと、幼少の頃を思い出していくような、ふるさとへの愛が溢れていくような、そんな思いが胸に込み上げてくるようです。

 

オープン直後に震災発生。逆境から始まった10年を振り返る。

2000年に八戸に移住してきた下村さん。ずっと飲食業界に身を置いていたこともあり、ブランド化される前から大好きだった八戸らーめんのお店をいつかやってみたいと考えていたようです。

姉妹店の〈南部食彩生パスタ Rit.〉で調理をする下村さん。

その後、2002年の東北新幹線の八戸駅延伸開業に合わせて、観光名所のひとつとして、みろく横丁がオープンします。そのニュースを見た下村さんは、いつかみろく横丁で商売をしたいと憧れを抱いたのだそう。
そんな中2010年の末ごろに、前のオーナーから〈味のめん匠〉を引き継がないか、と声をかけられます。

大好きな八戸らーめんの店を、憧れのみろく横丁の屋台で開業できる……。それは、下村さんが思い描いていた夢が形になることです。

下村さんの答えはもちろん「やります!」

その後、すぐに開店準備に取り掛かり、2011年3月。ついに〈味のめん匠〉がオープン!
下村さんの夢が叶った瞬間でした。

しかし、オープン直後に東日本大震災が発生。同年の夏頃に客足は戻ってきたそうですが、予定よりも負担の大きいスタートとなってしまいました。

「でもまぁ、乗り越えられたら何でもできる! って思ってました。挑戦状を叩きつけられた感じ」

と当時のことを語る下村さん。実は、鹿児島県徳之島出身の下村さんは、沖縄に近い離島文化の中で育ったおかげか、ポジティブな考え方が身についていると笑います。

てきぱきと作業をこなし、おいしいラーメンを作ってくれた〈めん匠〉スタッフのみなさん。

そんな逆境からのスタートだった〈めん匠〉ですが、開業からの10年間を振り返ってみても、やはり新型コロナウイルス感染拡大の影響は大きかったといいます。毎年伸びていた〈めん匠〉の売上もストップ。下村さんいわく、東日本大震災のときよりもダメージは大きかったのだそう。

しかし、持ち前のポジティブさでなんとか乗り切り、最近は7割ほど客足が戻ってきたといいます。

「深いことは考えないで、大体のことはテキトーにしちゃうんだよ」と笑いながらお話をしてくださった下村さんですが、その“テキトー”さがポジティブを生み出し、さらに逆境にも強くなるという好循環が生まれているのではないかと思います。見習いたい!

 

約100年の歴史を持つ八戸らーめん。伝統あるラーメンの“おいしい”とは?

実は、100年近い歴史と伝統を持つ八戸らーめん。その歴史の始まりは、昭和3(1928)年に遡ります。

六日町に鄭克銓(テイコクセン)さんという方が、食堂〈来々軒〉を開店。そこで、“支那そば”を売り出したのがはじまりといわれているそうです。

それから一度は途絶えてしまった八戸らーめんですが、昨今のあっさりラーメンを求める機運の高まりにより、八戸らーめんが復活!
さらに、東北新幹線八戸駅開業をきっかけに、現在のロゴマークや「懐かしの昔味」というキャッチコピーがつくられ、公式ブランド化。
2002年9月には、市内の飲食経営者らが中心となり、「八戸らーめん会」が設立されました。

長い間市民に親しまれてきた伝統の味は、現在も八戸らーめん会加盟店のみなさんによって、受け継がれています。もちろん、〈味のめん匠〉も加盟店のひとつです。

約100年もの歴史をもつ八戸らーめん。その味を守り続けていくために、大切なことは何なのでしょう。

八戸らーめん以外にもメニューは豊富です。

下村さんは、お客さんの味覚の変化に対応していくことが大切だと語ります。

例えば、約100年前からある八戸らーめんですが、100年前においしいと思って食べられていたものと、現在おいしいとされていたものの味はまったく異なります。

人の味覚は時代と共に変化していきます。さらに、現代では食べられる料理のバリエーションも豊富になっているので、お客さんの舌もどんどん肥えていく。こういった変化に合わせた“おいしい”を追求していかないと、本当のおいしい料理は提供できなくなっていくと下村さん。

特にラーメンについてはうるさいという八戸人。スープについても、麺についても、よく意見をくださるのだそう。そういったお客さんの意見を聞きながら、少しずつマイナーチェンジを施しているのです。

10年前の八戸らーめんと、現在の八戸らーめん。そして10年後の八戸らーめんは、少しずつ違う味わいになっているのでしょう。
その時代で最も“おいしい”味へと進化を遂げて。 

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