地元企業が守り続ける、昭和レトロな八戸の銭湯文化。〈八戸銭湯オールウェイズ〉【新井田】
八戸中心市街地から階上町方面へ向かう国道45号線沿いにある〈八戸銭湯オールウェイズ〉は、2020年にリニューアルオープンした銭湯です。運営しているのは、なんと産業廃棄物中間処理業や塗装工事、リフォーム事業を手がける地元の会社です。意外な組み合わせに思えますが、実はその組み合わせこそが、銭湯を守り続けるうえでの大きな強みになっていました。
八戸中心市街地から階上町方面へ向かう国道45号線沿いにある〈八戸銭湯オールウェイズ〉は、2020年にリニューアルオープンした銭湯です。運営しているのは、なんと産業廃棄物中間処理業や塗装工事、リフォーム事業を手がける地元の会社です。意外な組み合わせに思えますが、実はその組み合わせこそが、銭湯を守り続けるうえでの大きな強みになっていました。
青森県八戸市出身。関東で保育士として8年間、宿泊業界で2年間勤務したのち、地元・八戸へUターン。現在はフリーランスWebライター/編集者として、主に企業のオウンドメディアの記事制作に携わっている。
帰郷をきっかけに、八戸の自然や人の温かさ、地域の魅力を再確認し、地元をテーマにした取材・執筆にも力を入れ活動中。
X(旧Twitter)
〈八戸銭湯オールウェイズ〉は、八戸市新井田の国道45号線沿いにある銭湯です。朝6時から夜22時まで年中無休で営業しており、朝風呂を楽しむ年配の方から仕事帰りに立ち寄る会社員まで、幅広い世代に親しまれています。

料金は、大人(中学生以上)500円、子ども(小学生)150円、幼児(小学生未満)50円。
施設名の由来は、運営元である〈ノザワ〉の社長が大好きな映画『ALWAYS 三丁目の夕日』にちなんだもの。人と人とのつながりが色濃く残る、あの時代のぬくもりを大切にしたいという思いが込められているそうです。映画の世界観に合わせて、館内も昭和レトロな雰囲気でまとめられています。

昭和の銭湯といったら、番台(入浴料の受け取りや利用客の対応などを行う受付スペース)ということで、受付は番台スタイルに。
実は筆者も〈八戸銭湯オールウェイズ〉によく通う利用者の一人。趣味のランニング後に、サウナに入って身体の疲れをリカバリーするのが定番の過ごし方です。いつ来てもスタッフさんが温かく迎えてくださり、家族や知り合い同士の会話が行き交う和やかな雰囲気に包まれ、落ち着いた時間を過ごせます。
〈八戸銭湯オールウェイズ〉のお風呂やシャワーで使われているのは、すべて軟水です。
軟水とは、水分中に含まれるカルシウム・マグネシウムといった硬度成分を除去したお水です。肌への刺激が少なく、入浴後はまるで化粧水をまとったかのような、しっとりとした肌触りになります。

一番大きな浴槽。毎月26日は「風呂の日」で、その季節に合わせた季節湯が楽しめます。ちなみに2026年の7月は「もも湯」、8月は「はっか湯」、9月は「菊湯」でした。

並ぶのは「あつ湯」「ぬる湯」「水風呂」。好みの湯加減や、その日の気分に合った温度の湯船を選べるのは、うれしいポイントです。

洗い場の鏡に掲げられた鏡広告。地域でがんばる会社やお店、個人での活動を応援したいという思いから、掲載は無料で受け付けているそうです。
近年のサウナブームに伴い、サウナの利用者が増えたのだとか。かくいう筆者も、その利用者の一人です(笑)。自前のサウナハットやサウナマットを持って来館する利用者も少なくないといいます。
〈八戸銭湯オールウェイズ〉が導入しているのは、フィンランドサウナです。熱した石に水をかけて蒸気を発生させ、その蒸気により湿度と体感温度を高めるのが特徴です。

サウナ入口。

サウナの室内。設置されているテレビを見ながら、ゆっくりと汗を流せます。なお、サウナヒーターの安全管理上、現在は利用者が石に水をかけることはできません。
2026年の夏ごろに、新しいサウナヒーターに入れ替えたとのこと。以前より大きめの機種を選んだことで、たくさんの石を乗せられるようになり、より保温性が高まったといいます。また、性能も向上し、じわじわと身体の芯から温まる、やわらかな熱さに包み込みます。
〈八戸銭湯オールウェイズ〉を運営するのは、1978年創業の〈ノザワ〉。産業廃棄物中間処理の事業を中心に、塗装やリフォームなどの事業も手がける八戸市の企業です。

〈ノザワ〉が運営するミニショールームが併設されており、ロビーから直接アクセスできます。
もともとこの場所には、別の温泉施設がありました。閉館の話が持ち上がった際、温浴事業に興味を持った現社長が買い取り、引き継ぐことに。地元のみなさんから「温泉を続けてほしい」という声が寄せられていたことも後押しとなり、2020年に〈八戸銭湯オールウェイズ〉としてリニューアルオープンしました。
今回、取材でお話を伺ったのは、温浴事業部の課長を務める佐藤さん。話を聞くなかで、同社が持つ幅広い事業のノウハウが、銭湯の運営にも生かされていることがわかりました。

ハキハキとした口調で、笑顔で話される佐藤さん。現場全体の責任者として施設を管理しつつも、設備の状況によっては佐藤さん自らボイラーや配管の修繕作業にあたることもあるそうです。
近年では、配管や設備の老朽化により、閉館を余儀なくされる銭湯も少なくありません。しかし、〈八戸銭湯オールウェイズ〉の運営会社は、塗装やリフォームといった建物に関わる事業も行っていることから、銭湯の修繕に対応しやすい体制があるといいます。
「シャワーに不具合が生じたときがあって、シャワーにつながっている管をちょっと切ってみたんですよ。そしたら、管の3分の2がカルキで埋まっていて。これはダメだと、その部分を全部切り取って、新しい配管に交換したこともあります」
「もちろん、すべての修繕を自社だけで完結させているわけではありません。ありがたいことに、長年付き合いのある関連会社さんが多く、何かあればすぐに駆けつけてくださるので、休業期間を最小限に留められています」

広々とした脱衣所。定期的にスタッフの方が清掃しているので、いつも清潔に保たれています。
とはいえ、銭湯の経営を維持するのは並大抵のことではありません。なかでも佐藤さんたちが頭を悩ませているのが、地震です。過去には地震の影響で、地下から水を汲み上げるポンプが故障し、1ヵ月あまりの休業を余儀なくされたそうです。
「厄介なのは、被害がすぐに表れるとは限らないことです。地震が発生した2ヵ月後くらいに中庭の地面が陥没したときがあり、掘ってみると地中の排水管から水が漏れていました。大規模な修繕になると、やむを得ず臨時休業となり、営業面でも大きな痛手になります」
私たちが湯船に浸かりリラックスしている裏では、こうした地道な点検と修繕が日々続けられているのですね。
〈八戸銭湯オールウェイズ〉が大切にしているのは、昔ながらの銭湯文化です。
「スマホでメッセージを送り合うのではなく、実際に顔を合わせて言葉を交わす。そんな交流の場が、今はどんどん減っていると感じています。お湯に浸かりながら会話を楽しんだり、背中を流し合ったりして、人と人のつながりが生まれる銭湯文化を、いつまでもココに残していきたいんです」

ロビー。営業中は、お風呂上がりにジュースやアイスを楽しみながら、楽しそうに会話を交わす利用者の声が響きます。入浴中の家族や友人を待っている間、漫画本を読んだり、テレビを見たりして、のんびり過ごすこともできます。
佐藤さんたちの視線は、銭湯文化をこれから受け継いでいく子どもたちにも向けられています。
「大人になっても銭湯に足を運んでもらえるよう、子どもたちに“銭湯っていいところだな”と思える体験をしてもらいたいんです。例えば、乳幼児と小学生の利用料金を抑えて保護者が子どもを連れて利用しやすくしたり、子どもが喜ぶカプセルトイを置いたりといろいろ工夫しています」

子ども(入浴した小学生まで)に大人気のカプセルトイ。想像以上の反響だったようで、夏休みや冬休みには多くの親子連れが訪れるように。普段なら3〜4ヵ月でなくなるカプセルトイが、長期休みになると3週間ほどでなくなってしまうほどの人気ぶりだそうです。
こうした思いをかたちにし、〈八戸銭湯オールウェイズ〉の日常を支えているのが、現場で働くスタッフのみなさんです。
夜10時からは清掃スタッフが、深夜0時からはボイラーを清掃・運行する担当者が出勤。夜通しお湯を沸かし続け、そして朝5時には受付の従業員が出勤。日中の設備管理や修繕作業は、専門の事業者が対応にあたり、24時間、必ず誰かが施設にいる体制です。
こうして昼夜を問わず多くの人がつなぐバトンによって、〈八戸銭湯オールウェイズ〉は今日も変わらず、温かいお湯を用意して利用者を迎えています。
今回、取材するなかで、普段何気なく利用している銭湯の裏側に触れ、営業を続けるための苦労や工夫を知りました。いつもの温かいお湯は、ただ沸かせば届くものではなく、裏で働く人々の努力があってこそ成り立っているのだと気づき、感謝の気持ちが込み上げてきました。
※すべて取材時点での情報です。料金や最新情報は店舗へお問い合わせください。